南の往診獣医さんのブログ

往診獣医が獣医師ならではの視点で動物のこと、社会の出来事、その他の話題についてオリジナルイラスト付きで書いています。

動物からうつる病気

14年ぶりに狂犬病

「国内で14年ぶりに狂犬病発生」というニュースが出ましたので、触れておきます。 患者さんはフィリピンで犬に咬まれ来日後に発症していますので、「日本国内の犬からの感染ではない」という点は強調しておきます。 さて、この狂犬病という動物由来感染症は…

Unsung Hero 〜謳われることなき英雄〜

NEWSWEEK日本語版に「猫への新型コロナウイルス感染」に関する記事が掲載されました。 内容は私が前回お伝えしたことと同じですが、より分かりやすく解説されています。 新型コロナウイルス感染症が ・ヒトから猫に感染すること ・猫から猫へも感染すること …

「猫も新型コロナ感染」の報道について

また大きな問題が持ち上がってきました。 飼い主から猫に新型コロナ感染 ベルギーで3月27日に確認された事例です。 これが事実だとすると‥‥ 本来はトップニュース級の扱いです。 すでに稀なケースとして香港では犬への感染が確認されていますが、猫となると…

どうぶつえんにいきました。(3)

年明けに大阪市立天王寺動物園に行ったときのことを書きました。 こんな写真も撮ったことを忘れていました。 ある「動物」の写真です。 このスペースでは来園客が遊具で遊んでいます。 看板には「ヒト 知恵を得て運動能力を捨てたサル」と書いてあります。な…

「ペット犬に新型肺炎?」の報道について(2)

先日、 「ペット犬に新型肺炎?」の報道について(1) という題で香港での事例について書きました。 このときは 「人⇒犬への感染がおこったかどうかは確定的ではない」 という見解が示されていました。 しかし3月4日、香港政府は 「人から犬への新型コロナ…

「種特異性」とは?

「この病気は人にうつりますか?」 飼い主さんからよく尋ねられる言葉です。 「種特異性」という言葉があります。 今回はこれついて書きましょう。 ある種の動物には感染するが、別の動物には感染しにくい場合、その病原体は「種特異性が高い」と表現します…

よくわかるトキソプラズマ症7 〜知識のワクチン〜

50枚くらいイラストを描きました。 一週間くらい掛かりましたが、読むとあっという間ですね‥‥。 忘れてしまっている人のために、前回はこちら。

丑三つ時にカリカリと‥‥

このところ忙しくて、ようやく時間が取れました。 ちょこっとずつトキソプラズマのマンガを描き進めていますが、夜中しか時間が取れないので、本当にちょこっとずつしか進みません。 ふと気づいて足元を見ると‥‥、 描きかけのイラストや下書きの用紙が床に散…

よくわかるトキソプラズマ症6 〜彼らはどこを目指すのか〜

ようやく6回目まで来ました。 読んでくれている方、ありがとうございます。 忘れてしまった方のために前回はこちら。 では、本題に入りましょう。 またいずれ詳しく解説しますが、トキソプラズマの終宿主は猫です。 彼らは猫の体内に入り込まないとライフサ…

よくわかるトキソプラズマ症5 〜感染経路4〜

トキソプラズマの第5回です。 久しぶりなので、大まかな流れを忘れている方は前回からご覧下さい。 前回はこちら。 では今回、「なぜ生肉がいけないか」のお話に入りましょう。 ‥‥つづく。 というわけで、 「猫の糞」と「生肉」がどのように関連しているのか…

よくわかるトキソプラズマ症4 〜感染経路3〜

何とかトキソプラズマ症の第4回を描きました。 第3回はこちらです。 文章で書くと一瞬ですが、絵にすると三日くらいかかります。 でもわかりやすい方が良いのです。 あとあと描きますが、これを読んでいる皆さんが感染している可能性があるからです。 ‥‥つづ…

よくわかるトキソプラズマ症3 〜感染経路2〜

トキソプラズマ症の感染経路についてお話を進めています。 毎回、本当に少しずつしか進みませんが(描くには相当時間がかかるのですが‥‥)、確実にお話は進んでおります。 わかりにくくなった方は、最初から戻ってお読み下さい。 また、トキソプラズマ症の詳し…

よくわかるトキソプラズマ症2 〜感染経路1〜

ちょっと間があきましたが、「トキソプラズマ症」について漫画形式でまとめています。 トキソプラズマは動物由来感染症であると共に、母子感染症でもあります。 実際に障がいを持ってお生まれになるお子さんもおり、患者会も存在します。 トーチの会 – 先天…

よくわかるトキソプラズマ症1 〜発見〜

色々と試行錯誤しましたが、結局マンガにしてみました。 文章よりわかりやすく解説できそうですが、絵を描くぶん時間が掛かるので少しずつ進めていきます。 ◆解説 トキソプラズマはヒトを含む哺乳類、鳥類などの恒温動物に感染する寄生性原虫です。 ただし、…

猫からうつる?うつらない?

前回猫エイズについて書いたら、いつもより反響が大きくてビックリしています。 「猫エイズは人にうつらない」という情報提供の必要性と重要性を再認識しました。 動物の病気について飼い主さんに説明するとき、よく聞かれる事があります。 「人間にもうつり…

ペットフードのサルモネラ汚染について

ノースペット社の「ササミ姿干し製品」へのサルモネラ属菌混入事件。 昨日お昼のワイドショーでも取り上げられていました。 事件の概要は下記をご覧下さい。同社の「ビーフ干し肉製品」からもサルモネラ偽陽性の判定が出ています。 お心当たりのある方はもう…

レプトスピラ症(3) 〜犬も猫も注意〜

レプトスピラの話を続けています。・水辺での感染が多い ・経皮(皮膚から侵入)という感染経路を持つという特徴があることをお話ししました。 さて、このレプトスピラ症。 どの都道府県での発生が多いかと言うと‥‥。ダントツで沖縄県です。2016年 日本全国76…

レプトスピラ症(2) 〜川から皮へ〜

前回、マレーシアで鉄人たちを襲った「レプトスピラ」という細菌のお話をしました。これを「マレーシアの話じゃないか」と片付けてはいけません。日本でも、レプトスピラ症は古来より「秋疫(あきやみ)」として知られていました。 昔はゴムの長靴などありませ…

レプトスピラ症(1) ~水辺にひそむ螺旋~

2000年8月21日。 マレーシアのカリマンタン島。 当時、ここに世界中から鉄人が集結していました。 27か国から304名。いずれも体力に自信のある強者です。 彼らは4人から5人で1組となり、数日間かけてジャングルを走り、カヌーやカヤックを漕ぎ、時に峡谷を…

「生レバー」について

今日はこの記事から。SNSに「生レバーホームパーティー」の様子を上げたら非難殺到!法律的にNG?(Suits-woman.jp) - Yahoo!ニュース要点はこうです。・信頼できるお肉屋から購入した牛の生レバー ・お肉屋『昔ならレバ刺しにして食べていたくらい。でも絶…

「サルモネラ」と「徳川家康」

サルモネラのお話を続けてみます。 わかりやすく説明するために、「徳川家康」とからめた記事にしてみましょう。 さて、どんな話になりますか‥‥。 サルモネラという細菌を発見したのはサルモン博士。 1885年のことでした。サルモンさんが見つけたからサルモ…

その水槽、どこで洗う?

前回、子供と生物の触れあいについて書きました。ひとつ、言い忘れた事があります。 とても大事なこと。 「大人がしっかり衛生管理しましょう」 ということです。実例に目をむけてみましょう。 ちょっと奇妙な事件がアメリカで起きています。2004年、ワイオ…

「正の連鎖」ということ

先日、1997年のフロレス島で何が起こったかについて書きました。多くの方に関心を持っていただいたようです。 少し補足しておきますと、「何も殺すことはないではないか、発生下においても、周辺地域に先回りしてワクチンを打って回ったら終息させられるので…

渡名喜島へ

昨日は狂犬病の予防注射をしに、渡名喜村に行ってきました。 毎年、沖縄県獣医師会から誰かひとり派遣されます。これがフェリー琉球。 最終的な行き先は久米島ですが、私は渡名喜島までの船旅です。遅刻は絶対に許されませんので、午前8時前には船に乗り込…

ウイルスより先に船に乗ろう

一日終わって、夜からブログを書こうとすると電話が来てまた出かけて、帰ったら朝という日が続いております。今日も書いてる間に急患が出なければ良いのですが‥‥。さて、明日は早朝から港に行きます。 そして、船に乗ります。目的地は渡名喜村です。獣医師会…

みさ〜げて〜ごらん〜

不衛生なものを触ったらよく手を洗う、あるいは最初から使い捨ての手袋をしておく。こういった衛生対策はある程度知られているように思います。今日は足元の話をします。ノミがいたりノミの卵があったり、風邪ひき猫のクシャミが飛んでいたり、床というのは…

狂犬病 〜誤解されがちなこと〜

「フィリピンを旅行したノルウェー人女性が狂犬病を発症して亡くなった」というニュースについて。 現在、日本には狂犬病が見られません。 こういったニュースを目にしても実感がわかない方が多いかと思います。しかし狂犬病の清浄国は、大陸の端っこと一部…

腸管出血性大腸菌O157について 2

前回、「腸管出血性大腸菌O157」について書きました。 「腸管出血性大腸菌」‥‥、とここまでは字づらから意味がわかるとして、今日は 「Oとか157とかは結局、何なのか」 ということについてまとめておきます。まず、O(オー)からいきます。 これは「O抗原」のO…

腸管出血性大腸菌O157について

昨日、京都府で腸管出血性大腸菌O157に感染した女児が亡くなるという痛ましい出来事がありました。とても悲しいことです。そして一般の方々のコメント等を拝見していて、この腸管出血性大腸菌O157が 「非常に珍しいもの」 であるかのような受け取られ方…

生食の考え方、カエル?

今日はちょっとニュースを取り上げてみます。 「卑弥呼の時代に日本人はカエルを食べていたかも知れない」 ということです。これは特に驚くことではありません。 カエルの骨はもっと古い時代から、例えば京都の上里遺跡など縄文期の遺構からも出土しています…