南の往診獣医さんのブログ

往診獣医が獣医師ならではの視点で動物のこと、社会の出来事、その他の話題についてオリジナルイラスト付きで書いています。

ビニールの落ちた先で

子ヤギが生まれたので診に行きました。
母子ともに健康です。

時間が夜だったので写真が暗いですね。
この画像はトリミングしていますが
周囲には胎盤が落ちていたり、
お母さんヤギの陰部がまだ血だらけだったりで
非常にリアルな状況です。

命が命を産むことの重さを教えてくれる現場です。

ところで、このお宅では敷地が広いのに
ヤギのスペースはわずかです。
飼主さんは広い敷地の中に生えている草を刈っては、
ヤギの小屋に運びます。

思わず聞いてしまいます。
「敷地に放しては‥?そしたら草も刈らんでいいのに」
「前はそうしてたんだけどね‥‥」

ある出来事が続いてから、
出せなくなったとおっしゃいます。

「ビニール食うんだ、お菓子の包みとか、あんなのを」
「ビニールを!」
「近所の子が道に捨てて、風で飛んで庭に落ちるんだ」
「ビニール誤食すると、ヤギはダメですか」
「ダメだね、腸に詰まって」
「下痢もしますか」
「するね、何匹かそれで死んじゃった」

食肉関係に詳しい方にも聞きましたが、
確かにヤギの消化管に
ビニールが詰まっている事があるそうです。

実際、私も
「そう言えば」
と思い当たる症例がいくつかあります。

前日まで元気だった壮年のヤギが突然の下痢。
抗生剤も乳酸菌製剤も効かない、
検便しても糞線虫やコクシジウムなど
一切の寄生虫が検出されない、
鼓脹症のように腹部が膨満することもない。
どうしたのかと悩んでいるうちに急死する‥‥。

あれはひょっとすると、
ビニールの誤食だったのではないか‥‥。

今となってはわかりません。

しかし少なくとも、ヤギを飼っている皆さんは
周辺環境からビニールなど消化できない物を
遠ざけて下さい。

そして子供たち!
道にゴミを捨ててはいけません!