南の往診獣医さんのブログ

往診獣医が獣医師ならではの視点で動物のこと、社会の出来事、その他の話題についてオリジナルイラスト付きで書いています。

心臓に、毛が生える?

前回「心臓に骨がある」という話を書きました。

ついでに補足しておくと、本当に
「心臓に毛が生える」
ことがあります。

「あいつは、心臓に毛が生えたようなやつだ」という言い回しがありますが、実際に心臓に毛が生えるわけです。

これを病理学的には「絨毛心(じゅうもうしん)」と言います。

ただし、いわゆる毛髪のような毛が生えるわけではなく、心臓の外側の組織が毛羽立っている、という状態です。

絨毛心は病的な経過で現れます。
心臓は心膜という膜で包まれているのですが、ここに炎症が起こると線維素(せんいそ)という物質がたくさん作られます。

線維素はまるで岩藻のように、心膜や心外膜の壁に付着していきます。
すると心臓全体に毛が生えたようにみえるわけです。


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(参考:線維組織の病理画像)


この状態を病理学的には「線維素性心膜炎」とよびます。外見上は毛に覆われたように見えるため、この心臓を絨毛心と呼ぶわけです。

さらに補足をすると、心臓がトラ柄になる
「虎紋心(こもんしん)」
と呼ばれるものもあります。

これは心臓が「脂肪変性」という病的変化を起こした場合、まれに見られるものです。

心筋が、びまん性(範囲を特定できないほど広がっている)に脂肪化した場合、心臓が全体的に黄色調の縞模様となることがあり、これが虎の紋様に見えることから、この状態の心臓を「虎紋心」と呼ぶわけです。


絨毛心にせよ虎紋心にせよ、「心臓の異常」であることに変わりありません。
ですから「心臓に毛が生えたような」生き物は、たくましいどころか病理学的にはケアが必要な、弱った状態であると言えます。



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