往診獣医の事件簿2 ~ヤギと豆~
今日はヤギの話をします。
ここ沖縄では、ヤギがたくさん飼われています。
ある夜のこと。
離島から、相談がありました。
「ペットのヤギが苦しそうにしている」
ということです。
そこは沖縄本島から船で行くしかない島です。
ともかくお話を聞きます。
さっきまで食欲旺盛だったそうですが、
突然苦しみだしたそうです。
何か、悪いものを食べたらしい…。
一体、何を?
さらに詳しく話を伺うと、
どうやらお腹が膨れているようです。
これは、鼓脹症(こちょうしょう)かも知れません。
鼓脹症は簡単に言えば、
ガスで胃袋がパンパンに膨れてしまう病気です。
ヤギなどの反芻動物には胃が4つあります。
具体的には第一胃、第二胃、第三胃、第四胃とあって
それぞれに役割があります。
その第一胃で異常発酵が起こるとガスがたまり、
それが排出困難になると死に至ることがあります。
しかし、なぜ異常発酵が?
「穀物、イモなどはあげませんでしたか?」
あげていない・・・。
「豆はどうです?」
あげない・・・。
「食べていた草の中に、豆科の植物が混ざっていた可能性はないですか?」
夜でしたが、調べてもらいました。
するとビンゴです。
これは飼主さんからいただいた画像です。
どうやらこの豆を大量に食べてしまったようです。
夜遅くですからもう船はありません。
ヤギは寝たままだと胃腸管の運動が制限されますから、まず立たせてもらいました。
あと飼主さんにできることは、
腹部のマッサージくらいでしょうか・・・。
もちろんマッサージもれっきとした治療法です。
飼い主さんの看病の甲斐あって、
結局、ヤギは回復しました。
翌日、自生しているこの植物の画像を提供してもらいました。
なるほど、確かに豆ですねこれは。
ということで、ヤギを飼っているかた。
近くにマメ科の植物が自生していないか、
よくよく注意しましょう。