南の往診獣医さんのブログ

往診獣医が獣医師ならではの視点で動物のこと、社会の出来事、その他の話題についてオリジナルイラスト付きで書いています。

Unsung Hero 〜謳われることなき英雄〜

 

NEWSWEEK日本語版に「猫への新型コロナウイルス感染」に関する記事が掲載されました。

内容は私が前回お伝えしたことと同じですが、より分かりやすく解説されています。

 

 

新型コロナウイルス感染症

・ヒトから猫に感染すること

・猫から猫へも感染すること

ここまでは学術的なエビデンス(証拠)が固まりつつあると見ていいでしょう。

 

幸い、猫からヒトへの感染は現時点において確認されていません

 

さて、今日はのら猫の話をします。

私はかねてより

「のら猫の問題は動物福祉の問題であると同時に、動物由来感染症のリスク低減に関する問題である」

と主張してきました。

 

「のら猫が街を行き来する現状のままでヒトと猫の間にまたがる動物由来感染症が発生すれば、想像を絶する混乱が起きる」ことが予測されたからです。

 

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であるが故に、のら猫や捨て猫を減らすために活動している多くの方々のことが獣医師として、そして友人として常に気がかりでした。

 

もちろん、捨て犬や多頭飼育崩壊の動物の問題に向き合っている愛護団体やボランティアの方々のこともです。

 

なぜならばその人たちは単に動物愛護に関わっている集団ではなく、

 

動物由来感染症リスクの高い動物をリスクの低い状態に移行させている集団

 

でもあるからです。

であるが故に、

この問題の最前線にいる愛護団体、ボランティアの方々を動物由来感染症から守る研修・知識・情報が法に基づいて提供されるべきである

と主張してきました。

 

新型コロナウイルス感染症に関して言えば、ヒトから猫、猫から猫へ拡散させることは絶対に防がねばなりません。

そのためには、飼育者がその自覚を持つことが非常に重要です。

 

加えて大事なことは、動物愛護団体やボランティアの方々の生命を守らねばならないということです。

 

動物愛護団体やボランティアの方々は、のら猫を減らすことによって、動物由来感染症の拡大によって社会が受けるダメージ」を低減させています。

その彼らを動物由来感染症から守るための情報や研修が必要です。

そしてそれは法を伴ったものでなくてはいけません。

 

職業として動物を扱う動物取扱責任者の場合、年1回以上の研修を受けなければならないことが動物愛護法に定められています。

しかし動物愛護団体やボランティアさんはその対象ではありません。

 

感染症の種類、消毒のやり方、手袋の着脱方法など感染を防除するために必要な知識。

恒常的にそれらが必要だと感じます。

 

もし日頃から高いレベルでそれを身につけている集団であれば、動物由来感染症の拡大が起きてもそれを無防備な状態で迎える事にはならないでしょう。

 

ですから、

・動物愛護活動に関わる人たちが動物由来感染症リスクの高い動物をリスクの低い状態に移行させている集団でもあるということ

・その人たちが動物由来感染症を防ぐ知識を得ることが法によって保障されるべきだということ

 

それを改めて訴えたいと思います。

 

 

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