南の往診獣医さんのブログ

往診獣医が獣医師ならではの視点で動物のこと、社会の出来事、その他の話題についてオリジナルイラスト付きで書いています。

14年ぶりに狂犬病

「国内で14年ぶりに狂犬病発生」というニュースが出ましたので、触れておきます。 患者さんはフィリピンで犬に咬まれ来日後に発症していますので、「日本国内の犬からの感染ではない」という点は強調しておきます。 さて、この狂犬病という動物由来感染症は…

針の誤飲! 続報

前回、「針の誤飲が続出しているのでは?」ということを書きました。 ここしばらく、「沖縄県獣医師会」という小さなコミュニティの中でとは言え、縫い針やまち針の誤飲件数が非常に多いことがわかってきました。 そこで沖縄県獣医師会は県下動物病院に緊急…

針の誤飲!

「うちの猫ちゃんが」 「飲んだんですか?まち針を?」 「たぶん‥‥。一本無いんです。遊んでるところを見たんです。アッと思ったら無くなっていて」 「この、残ってる針と同じ長さですか。しかしこりゃあ、飲めるような長さでは‥‥」 「でも、無いんです。飲…

動物への感染について 新型コロナ続報④

この新型コロナウイルス感染症については未知の部分が多く、情報が日々更新されていきます。 例えば、大手の動物臨床検査会社である「アイデックスラボラトリーズ」は定期的に新型コロナ情報を更新しています。 このサイトには、現時点(2020年4月26日)で以下…

Unsung Hero 〜謳われることなき英雄〜

NEWSWEEK日本語版に「猫への新型コロナウイルス感染」に関する記事が掲載されました。 内容は私が前回お伝えしたことと同じですが、より分かりやすく解説されています。 新型コロナウイルス感染症が ・ヒトから猫に感染すること ・猫から猫へも感染すること …

武漢 : 猫での感染拡大? 新型コロナ続報③

中国の武漢で原因不明の肺炎が報告されはじめたのが2019年の12月ごろ。 それが、こんにちの新型コロナウイルスによる騒擾と混乱につながったことは言うまでもありません。 そして今月、バイオアーカイブ(bioRχiv)上に 「武漢で同じウイルスが猫の間に広がり…

ヒトから虎へ? 新型コロナ続報②

前回、「ヒトから猫へ」そして「猫から猫へ」新型コロナウイルスが感染したというニュース記事を補足しました。 このとき、より慎重な検討が必要だと書きました。 ・例数が少ないこと ・多角的に検証された臨床例ではないこと そのような理由からでした。 ヒ…

猫から猫へ? 新型コロナ続報①

「猫から猫へ新型コロナウイルスが感染する」という報道があります。 2020年4月1日、イギリスの大手一般紙「ガーディアン」が報じました。 記事から抜粋すると The team, at Harbin Veterinary Research Institute in China, found that cats are highly sus…

「猫も新型コロナ感染」の報道について

また大きな問題が持ち上がってきました。 飼い主から猫に新型コロナ感染 ベルギーで3月27日に確認された事例です。 これが事実だとすると‥‥ 本来はトップニュース級の扱いです。 すでに稀なケースとして香港では犬への感染が確認されていますが、猫となると…

どうぶつえんにいきました。(3)

年明けに大阪市立天王寺動物園に行ったときのことを書きました。 こんな写真も撮ったことを忘れていました。 ある「動物」の写真です。 このスペースでは来園客が遊具で遊んでいます。 看板には「ヒト 知恵を得て運動能力を捨てたサル」と書いてあります。な…

獣医学と歴史(10) 〜タバコで長生き? 疫学の不思議〜

新型コロナに限らず感染症が世の中に広がると、考えねばならないのが「集団」と「病気」の関係です。 いま、色々な人が様々なデータを持ち出して、 「データから予測するとコロナはこうなる」 「過去のデータから推察するとこうだ」 という論理展開がなされ…

「ペット犬に新型肺炎?」の報道について(2)

先日、 「ペット犬に新型肺炎?」の報道について(1) という題で香港での事例について書きました。 このときは 「人⇒犬への感染がおこったかどうかは確定的ではない」 という見解が示されていました。 しかし3月4日、香港政府は 「人から犬への新型コロナ…

獣医学と歴史(9) 〜歴史を蘇らせるということ〜

一年ほど前、英語の 「quarantine」 = 「検疫する」 の語源がイタリア語であって、 その意味は「40」であることを書きました。 ペスト拡大を防ぐため、ヴェネツィア共和国は感染地域からの船の入港をストップ。 40日間、海上にとどめ置きました。 驚くべき…

「種特異性」とは?

「この病気は人にうつりますか?」 飼い主さんからよく尋ねられる言葉です。 「種特異性」という言葉があります。 今回はこれついて書きましょう。 ある種の動物には感染するが、別の動物には感染しにくい場合、その病原体は「種特異性が高い」と表現します…

「ペット犬に新型肺炎?」の報道について (1 )

「香港でペットの犬から新型コロナウイルス陽性反応」 という報道がありました。 きのう飼い主さんからもこの件について相談がありましたので、整理しておきます。 報道によれば、ペットの犬から採取したサンプルをPCR検査したところ、弱陽性を示したという…

PCR検査とは? (2)

「PCR検査とは?」の続きです。 例えば、ある「日本昔ばなし」の本。 背表紙もなく、文章もバラバラにされています。 もともとは何の話だったのか‥。 しかし、ヒントはあります。 「背中に」「ごちそう」「そのとき、白い」 もしや、このお話は‥。 そこであ…

PCR検査とは?

新型コロナウイルスに関する報道で、「PCR検査」という言葉をよく耳にします。 ほら、長嶋一茂さんも‥。 PCR。 正式には Polymerase (ポリメラーゼ) Chain (チェイン) Reaction (リアクション) いわゆる「ポリメラーゼ連鎖反応」です。 ‥‥‥だから何のこっち…

猫のコロナウイルス感染症

今日は猫のコロナウイルスのお話をします。 猫にもコロナウイルス感染症があります。 検査項目にも、この通り。 しかし、「猫コロナウイルス感染症」という言葉はあまり聞かないような気もします。 では、この病名はどうでしょうか。 猫伝染性腹膜炎。(ねこ…

1万分の1は0か

ここしばらく往診件数が多くて、日付をまたぐ日が続きました。 時間のかかかる難しい症例もあります。 なにも技術的なことだけではありません。例えば「告知する」という行いもその一つです。 「これは助かる見込みのない病気です」 とだけ言ってそそくさと…

犬のコロナウイルス感染症

今日はいま世間を騒がせている「ヒトのコロナウイルス」ではなく、「犬のコロナウイルス」のお話をします。 「犬にもコロナウイルス感染症がある」と言うと飼い主さんはたいてい驚かれます。 しかし、混合ワクチンをよく見てみると‥‥。 確かに「犬コロナウイ…

猫、ネズミ、そしてあの長いやつ

豚コレラも終息に向かいつつあるようで、ひとまずホッとしています。 家庭や学校の動物を診るのが私の仕事ですが、今回のような家畜の伝染病が対岸の火事かというと、必ずしもそうではありません。 例えば。 ノラ猫に関する苦情が頻発しているような地域があ…

たかが紐、されど紐

まずこの写真を見てください。 往診先で撮ったものです。 子犬の足が写っていますね。 そして地面の上に落ちているのは‥‥。 「ひも」です。 ここへは狂犬病の予防注射に来ました。 注射のあとすぐ帰ってよいでしょうか。 いいえ、それはいけません。 飼い主…

豚コレラ(CSF)と猫

さて今日は豚と猫についてのお話を書きます。 猫が欲しい、という方に理由を伺うと 「ネズミをとってくれるから」 とお答えになる場合があります。 詳しく伺うと「家畜の飼料を狙ってネズミが来る」とのこと。 ところが基本的に、いま多くの動物愛護団体では…

どうぶつえんにいきました。 (2)

以前、天王寺動物園について書きました。 少しお話を続けましょう。 むかし、天王寺動物園に限らず多くの動物園で動物は「見せ物」でした。 珍しい動物をオリに入れて見せる。 芸を仕込ませて観客を喜ばせる。 戦時中であれば、動物に軍服を着せて戦意高揚を…

沖縄で豚コレラ(CSF)‥‥。

動物園についての続きを書きたかったのですが‥。 沖縄で豚コレラが発生しましたので、今回はそれについて書きます。 ちなみに現在、「豚コレラ」は「CSF (classical swine fever)」と呼ばれるようになっています。 理由は、豚コレラがコレラ菌とは何の関係も…

どうぶつえんにいきました。 (1)

今から30年以上前。 私がまだ子供だったころ。 動物園に連れて行ってもらいました。 大阪市にある「天王寺動物園」。 母親に手を引かれて、天王寺駅から歩きました。 途中、降り注ぐジャイアンリサイタル並みの大音量。赤ら顔のオッチャンたちが青空カラオケ…

獣医学と歴史(8) 〜ハジラミと大陸移動説②〜

前回の続きです。 ヴェーゲナーの大陸移動説は多くの批判を浴びました。 「大陸を移動させるだけのエネルギーはどこから供給されるのか」 当時、その問いに対する科学的な答えが存在しなかったのも大きな理由でした。 その一方で、ある人物は生物学の立場か…

獣医学と歴史(8) 〜ハジラミと大陸移動説①〜

さて前回、猫ハジラミについて書きました。 このハジラミという生物は、実にいろいろな生物に寄生します。 ところが、1種類のハジラミが様々な生き物に寄生するわけではありません。 彼らは自分が寄生する生物へのこだわりが強く、猫ハジラミは猫に、犬ハジ…

君はシラミを知っているか

「君は〜を知っているか」という題にすると、不思議に閲覧数が多くなるので、そうしてみましたが‥‥、 先日、シラミのついた猫を診ました。 シラミ、という生き物を知らない世代の方もいます。 ということで、これがシラミです。 正確には、猫ハジラミです。 …

猫と「みんなの願い」

前回の投稿に対して、実に様々な意見をいただきました。 そこでひとつ、短いお話を紹介したいと思います。 ある日、人々の心の中に声が聞こえてきます。 神の使いと名乗るその声は、 「重大なお知らせがある」 と語りかけてきます。 ・地球は誕生から、宇宙…