南の往診獣医さんのブログ

往診獣医が獣医師ならではの視点で動物のこと、社会の出来事、その他の話題についてオリジナルイラスト付きで書いています。

動物雑学

PCR検査とは? (2)

「PCR検査とは?」の続きです。 例えば、ある「日本昔ばなし」の本。 背表紙もなく、文章もバラバラにされています。 もともとは何の話だったのか‥。 しかし、ヒントはあります。 「背中に」「ごちそう」「そのとき、白い」 もしや、このお話は‥。 そこであ…

PCR検査とは?

新型コロナウイルスに関する報道で、「PCR検査」という言葉をよく耳にします。 ほら、長嶋一茂さんも‥。 PCR。 正式には Polymerase (ポリメラーゼ) Chain (チェイン) Reaction (リアクション) いわゆる「ポリメラーゼ連鎖反応」です。 ‥‥‥だから何のこっち…

豚コレラ(CSF)と猫

さて今日は豚と猫についてのお話を書きます。 猫が欲しい、という方に理由を伺うと 「ネズミをとってくれるから」 とお答えになる場合があります。 詳しく伺うと「家畜の飼料を狙ってネズミが来る」とのこと。 ところが基本的に、いま多くの動物愛護団体では…

どうぶつえんにいきました。 (2)

以前、天王寺動物園について書きました。 少しお話を続けましょう。 むかし、天王寺動物園に限らず多くの動物園で動物は「見せ物」でした。 珍しい動物をオリに入れて見せる。 芸を仕込ませて観客を喜ばせる。 戦時中であれば、動物に軍服を着せて戦意高揚を…

沖縄で豚コレラ(CSF)‥‥。

動物園についての続きを書きたかったのですが‥。 沖縄で豚コレラが発生しましたので、今回はそれについて書きます。 ちなみに現在、「豚コレラ」は「CSF (classical swine fever)」と呼ばれるようになっています。 理由は、豚コレラがコレラ菌とは何の関係も…

どうぶつえんにいきました。 (1)

今から30年以上前。 私がまだ子供だったころ。 動物園に連れて行ってもらいました。 大阪市にある「天王寺動物園」。 母親に手を引かれて、天王寺駅から歩きました。 途中、降り注ぐジャイアンリサイタル並みの大音量。赤ら顔のオッチャンたちが青空カラオケ…

空を飛ぶ、肉?

前回、ビタミンCを合成できない動物について書いたときに、オオコウモリについても触れました。 私がふだん往診している沖縄県の南部地域にも、オリイオオコウモリという種類のオオコウモリがいます。 彼らは枝にぶら下がり、せっせと果実をかじっています。…

ヒトとモルモットの共通点は‥‥。

前回のヤギのお話を書いたら、往診先で 「ヤギはビタミンCを合成できてすごいですね!」 というような感想をいただきました。 他の動物たちの名誉のために補足しておくと、多くの動物はビタミンCを体内で合成可能です。ヒトは合成できませんが、これはヒトの…

日本人の動物観

沖縄を台風17号が通過中。 毎度毎度のこととは言え、こればっかりはどうしようもありません。台風とからめて、「日本人の動物観」についてのお話をします。ということで、そのお話に欠かせない人物にご登場願いましょう。和辻 哲郎(わつじ てつろう) 1889年…

夜に口笛‥‥蛇が出る?

ちょっと調べないといけないことがあって、久しぶりに疫学の勉強をしています。疫学というのは「集団における疾病の発生原因や予防などを研究する」学問領域のことです。 これをしっかり勉強していないと、ある疑問に対して誤った結論を導いてしまいます。た…

心臓に、毛が生える?

前回「心臓に骨がある」という話を書きました。ついでに補足しておくと、本当に 「心臓に毛が生える」 ことがあります。「あいつは、心臓に毛が生えたようなやつだ」という言い回しがありますが、実際に心臓に毛が生えるわけです。これを病理学的には「絨毛…

心臓の、ホネ?

「心臓に骨がある」と言うと一般の方は驚くことでしょう。しかし獣医領域では、珍しいことではありません。 ある種の動物では心臓に骨があります。 これを「心骨(しんこつ)」と言います。 心骨は意外に皆さんのなじみ深い動物で見られるのですが‥‥。‥‥という…

育児放棄?‥‥ではなくて。

おや、電話がかかって来ました。「母親なのに、赤ん坊にほとんどおっぱいあげないんですよ。というかね先生、そもそも」 「はい、そもそも」 「赤ん坊のとこにいないんです。産んだばっかりですよ!日に2、3回は戻ってるようですけどね‥‥」 「そんなもんです…

カラスとクルミと古代オリンピック

たとえば、クルミを割ろうとする。 手元にカナヅチがない。 どうしようか‥‥。高いところから落とせれば割れる? 二階から落としてみるか。 いや、もっと高い所からでないと。 5階?10階? さすがに20階からなら。 よし、行こう! ‥‥ヒイヒイ、長い階段だなぁ…

楽しく勉強するには‥‥。

昨日お話ししたように、愛玩動物協会のテキストを読みながら自分が講義を担当する部分を復習しています。犬や猫の体の特徴についても触れるのですが、こういった解剖学的な事はなかなか頭に入ってこないかも知れませんね。疲れたら、少し脇道にそれてみるの…

一枚の写真が語ること

日曜日は狂犬病の集合注射に出て、昨日は夜10時くらいまで会議があって‥‥。普通、仕事が忙しいとだんだん人間性を失ってしまうわけですが‥‥。しかし私は「動物と触れあう」のが仕事。 そんなにストレスがたまりません。 ありがたいことです。今日はそんな話…

疝痛とは

「一般の方にはあまり聞きなれない言葉」 が使われているニュースです。ケイティブレイブという馬が 疝痛(せんつう)に見舞われ出走取り消し、 というニュースです。この「疝痛」という言葉は、 普段あまり聞く事がないと思います。これは非常に大まかな呼…

タヌキという珍獣

'' 船場山にはタヌキがおってさ それを猟師が鉄砲で撃ってさ 煮てさ 焼いてさ 食ってさ '' 童謡の「あんたがたどこさ」。日本人に大変親しみの深い歌です。 タヌキは、我が国では昔からよく知られた動物です。 (Wikipedia)歌詞の中では猟師が煮たり焼いたり…

チンチラ、チンチラ、チンチラ。

お電話です。「もしもし。うちの子を診てもらいたくて」 「種類は何ですか?」 「チンチラです!」むむっ。注意せねばなりません。「念のために伺いますが」 「はい」 「チンチラですね?」 「チンチラです!」 「うさぎや猫ではありませんね?」 「チンチラ…

気象病と動物

季節の変わり目、このところ 「気象病(きしょうびょう)」 という言葉がよく使われます。これは特定の疾患を指すのではなく、 「気象変化よって症状が出現・悪化する疾患」 の総称です。例えば曇りの日は膝が痛いとか、 雨の日は頭痛が起きるといったような…

ポメラニアンとジャンガリアンハムスターの共通点

ポメラニアン。 ネコ目 イヌ科 イヌ属。 (Wikipedia)ジャンガリアンハムスター。 ネズミ目 キヌゲネズミ科 ヒメキヌゲネズミ属。 (Wikipedia)どう見ても、とにかく色々と違います。 しかし、ある共通点があります。 「両方とも哺乳類である!」 というのは無…

借りてきた猫とブッダ

借りてきた猫、という言い回しがあります。 確かに、よそへ行くと猫というものは おおかたおとなしい生き物になってしまいます。しかし、必ずしも常にそうだとは言い切れません。 よそへ連れて行かれると逆に興奮してしまって、 どうにも手がつけられない子…

「四角い」皮膚炎

先日、このブログで 「皮膚病で幾何学的に整った病変はまれである」 と書きました。「ありえない」 と書かなかったところがミソです。もしそう書いたら、知り合いの獣医さんから 「あなた県に勤めてた頃、さんざん診断したでしょ」 とツッコミが入ります。そ…

12000年前の犬を推理する

昨日、 「アブダクション」 という推理法について書きました。何か不可思議な出来事に出会ったとしても、 それを否定したり捻じ曲げたりせずに 「そのような事が現実に起こった」 という所からスタートする推理法です。今日は過去の出来事に使ってみましょう…

ハブは、なぜハブと呼ばれるのか

昨日、ハブのお話をしました。今日は 「ハブ」 という言葉について考えてみます。そもそもハブは、 なぜハブと呼ばれるのか。「古語拾遺(こごしゅうい)」 という古い書物があります。この中にスサノオノミコトが 「ヤマタノオロチ」 を退治する場面が出てき…

何に咬まれた?

ここ沖縄で 「庭先に出た猫が足を引きずって帰ってきた」 「片方の足と比べて二倍ほどに腫れている」 とくれば 「ハブか?!」 となります。とりあえず、 往診の順番を入れ替えて急行します。う〜ん、 ちょっと違うような‥‥。ハブの場合、もっと腫れます。 …

鎧、能面、そしてヘビ

昨日の鎧兜のお話をもう少し続けてみます。引き続き、 沢瀉縅大鎧(おもだかおどしおおよろい)。 今日は胸部にご注目下さい。 鎖骨周辺を守るパーツが左右非対称です。向かって右が鳩尾の板(きゅうびのいた)、 向かって左が栴檀の板(せんだんのいた)。左側の…

豚コレラを「斬る」

昨日、 「豚コレラを読む」 という話をしました。今日は、斬ってみます。 と言っても、 「現代日本を斬る」とか、 「格差社会を斬る」などの 深層に迫る、という意味ではありません。 ただ単純に、斬ってみます。「豚コレラ」ですから、 「豚」と「コレラ」…

豚コレラを「読む」

しばらく、学校飼育動物に かかりっきりでした。その間に、 「豚コレラ」の感染が拡大していました。今回は、 「豚コレラ」 を読んでみたいと思います。と言っても、 「日本を読む」とか、 「明日を読む」といった、 動向予測という意味ではなくて 本当にた…

トナカイの鼻は赤い?

今日は症例の話から少し離れて。 「赤鼻のトナカイ」 という歌があります。 原題は 「Rudolph the Red-Nosed Reindeer」 直訳すると「赤鼻のルドルフ」。 定番のクリスマスソングですね。 そして、この時期よく見られるイラストでも、トナカイの鼻はしっかり…