南の往診獣医さんのブログ

往診獣医が獣医師ならではの視点で動物のこと、社会の出来事、その他の話題についてオリジナルイラスト付きで書いています。

獣医学と歴史 (4) 〜 『象徴』とゾウ〜

日本国憲法下で『象徴』と位置づけられた天皇の望ましい在り方を、日々模索しつつ過ごして来ました‥‥」

往診中、カーラジオから聞こえてくる談話に耳を傾けます。
平成が終わるのか‥あっという間だったなぁ‥。

そして、思い浮かべる動物があります。

ゾウです。

「象徴」という字には
ゾウという字が使われています。

かたちやシンボルを表す漢字になぜ、
「象」
という字があてられるのでしょうか。

それは漢字を生み出した古代中国人が、
ゾウの特異な外観とサイズ感を目にして
「何て姿だ!」
と驚嘆した結果だと考えられています。

ゾウ→すがた

という意味が派生したというわけです。

しかし、そもそも「象」という漢字は
どのようにして作られたのか。

それは、象という字を左に90度回転させるとわかります。
だんだんゾウに見えてくるでしょう。
言うまでもなく、象は象形文字です。

殷王朝(紀元前17世紀-前1046年)には、
すでにこの漢字の原型は成立していたようで、
甲骨文字の中にも見いだされます。

ここで一つ、大きな疑問が生まれます。
殷は黄河流域を中心に栄えた王朝で、
支配領域にはインドなど現在ゾウが住む地域を含みません。


(Wikipedia)

象形文字を作るためには当然、見本がなければなりません。
彼らはなぜゾウを見ることができたのか。

答えは非常にシンプルです。
どうやら殷の時代は今よりずっと温暖で、
黄河流域には象が生息していたようです。

殷代の甲骨文字の中には、
「王が狩りに出るのですが、象を狩って帰ることができるでしょうか」
という占いの跡が残されています。

時代は下りますが、春秋時代の諸侯の争いの際にも
「象の尻尾に火をつけて、敵に向かって放つ」
という作戦が記されています。

かつての中国人にとって、象は身近な動物だったようです。
恐らく、巨大建造物の造成や街道の整備、
運河の建設などには欠かせない労働力だったでしょう。

その後寒冷化が進み、象は中国大陸から姿を消します。

しかし「象」という漢字は脈々と生き延び、
新しい時代を迎える日本の新聞にも、
ネット記事にも頻繁に登場します。

「象という字は、こんな感じでいいかな」
初めて甲骨に刻んだ人物も
3000年以上あとのこの「現象」は、
予想できなかったでしょうね。



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