南の往診獣医さんのブログ

往診獣医が獣医師ならではの視点で動物のこと、社会の出来事、その他の話題についてオリジナルイラスト付きで書いています。

腸管出血性大腸菌O157について

昨日、京都府腸管出血性大腸菌O157に感染した女児が亡くなるという痛ましい出来事がありました。

とても悲しいことです。

そして一般の方々のコメント等を拝見していて、この腸管出血性大腸菌O157
「非常に珍しいもの」
であるかのような受け取られ方をしているように感じました。

この点に少し不安を覚えますので、食肉衛生に関わった経験のある獣医師として少し補足させていただきます。

基本的な事項として
「牛をはじめ、家畜がO157を保菌していることは珍しくない」
ということです。


(Wikipedia)

特に牛、羊など反芻動物においては、O157はごく普通に大腸に生息しています。
ところがほぼ無症状で保菌しているため、特に問題なく食肉処理場に搬入されます。

例えばこれは大阪市のデータですが、
大阪市食肉処理場に搬入された牛55頭のうち、22頭からO157が分離されています。
率にすると40%です。

https://www.jstage.jst.go.jp/article/jvma1951/58/3/58_3_205/_pdf/-char/ja

ただ文献を読むとわかるように、
これは牛から採材した
・第一胃内容物
・直腸便
を調べたのであって、通常我々が食べる
「肉」について保菌状況を調べたものではありません。

しかし食肉の処理、加工、流通、調理の各工程において、肉がO157に汚染されることは考えられます。

であるがゆえに基本的には、肉は加熱して食べる必要があるわけです。

夏季には、牛における腸管出血性大腸菌O157の保菌率も上昇します。

今回京都の事例ではいまだ感染経路が特定されていませんが、これから気温も上がります。
食品衛生にはより注意を払うべきと言えるでしょう。