南の往診獣医さんのブログ

往診獣医が獣医師ならではの視点で動物のこと、社会の出来事、その他の話題についてオリジナルイラスト付きで書いています。

腸管出血性大腸菌O157について 2

前回、「腸管出血性大腸菌O157」について書きました。
腸管出血性大腸菌」‥‥、とここまでは字づらから意味がわかるとして、今日は
「Oとか157とかは結局、何なのか」
ということについてまとめておきます。

まず、O(オー)からいきます。
これは「O抗原」のOです。
‥‥といってもよくわかりませんね。
生物学用語というのは、だいたいよくわかりません。

そこで仮に、ここにナンヤネンという生き物がいると考えてみます。
これがナンヤネンだとしましょう。

調べてみると、ナンヤネンには色々な模様を持つタイプがあることがわかりました。
そこで、ナンヤネンに番号を振ることにします。
便宜上、その模様をO(オー)と略することにしましょう。
ナンヤネンを発見するたびに、模様を確認しながらO1、O2、O3.....と分類していきます。

そして、未知の模様を持つものが発見されたら新しい番号を与えます。

さて、あらかた分類が終わりました。
ここで、ナンヤネンO157だけ集めてみましょう。
さすがにみんな同じ模様をしていますが‥‥。
どうも統一感がありませんね。

よく見ると、皮膚表面から「毒を出すタイプ」と「毒を出さないタイプ」がいるようです。
どうやらナンヤネンO157には、毒を出すタイプのものが多いようですね。

比較のために、ナンヤネンO35を集めてみます。
どうやら、このグループには毒を出すタイプのものはいないようです。

毒を出すタイプは、ナンヤネンO157にだけ存在するのでしょうか。

そこで念のため、別のグループであるナンヤネンO111を集めてみます。
するとここには、毒を出すタイプのものが少しいるようです。

こうしてみると、
「ナンヤネンには毒を出すタイプのものがいるが、ナンヤネンO157のグループには特にそれが多い」

ということが言えます。

ここで大腸菌の話にもどりましょう。
大腸菌も、ナンヤネンを分類したときのように
「菌表面の構造の違い」
によってグループ分けがされています。
菌表面の構造が違うと、それが抗原性の違いとして現れます。

したがって、
O157とは大腸菌を菌表面の違い(=抗原性の違い)によってグループ分けしていって、振り分けられた番号が157番目のもの」
ということになります。

現在そのグループは、O1から数えて200近く存在します。

そして、腸管出血性大腸菌症ではO157抗原をもつ大腸菌が多く分離されています。
だから腸管出血性大腸菌‥‥と来ると、O157と続く場合が多いわけですね。

しかし、かと言って
O157抗原を有する大腸菌=毒素産生菌、
というわけでもありません。
毒素を出さないO157もいますし、
O157ではないのに毒素を出す大腸菌もいます。

例えばこれは、 腸管出血性大腸菌症O26による感染事例ですね。
保育所における腸管出血性大腸菌O26 集団感染事例―岐阜県

このほかにも、毒素を出す大腸菌としてO111が知られています。

ということで「O157」という言葉の中身についてまとめてみました。



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