「サルモネラ」と「徳川家康」
サルモネラのお話を続けてみます。
わかりやすく説明するために、「徳川家康」とからめた記事にしてみましょう。
さて、どんな話になりますか‥‥。
サルモネラという細菌を発見したのはサルモン博士。
1885年のことでした。
サルモンさんが見つけたからサルモネラというわけですね。
発見者の名前が付く、というのは生物学の分野では珍しくありません。
(Daniel E. Salmon 1850-1914 米)
ただ、この「サルモネラ」というのは大きなグループ。
その下に「サルモネラ 〇〇〇」と下の名前が続きます。
例えば「徳川」と言われても誰のことかわかりません。
「徳川家康」となってはじめて、
「ああ、徳川家の家康さんだな」となります。
前回、Salmonella Thyphimurium (サルモネラ ティフィムリウム)
というサルモネラについて書きました。
早口言葉みたいな名前です。
「サルモネラに属するティフィムリウムという菌」
ということになります。
だがしかし。
これすら、実は略した書き方なのです。
「サルモネラ ティフィムリウム」の正式名は
Salmonella enterica subspecies enterica serovar Typhimurium
「サルモネラ エンテリカ サブスピーシーズ エンテリカ セロバー ティフィムリウム」
です。
何でこんな事になるんだ、徳川家康みたいにシンプルにならんのか‥‥、
ところが。
徳川家康、という名前も略されたものです。
正式には
徳川 次郎三郎 源 朝臣 家康。
徳川:名字
次郎三郎:通称
源(みなもとの):氏(うじ)
朝臣(あそん):姓(かばね)
家康:諱(いみな)
結局のところ家康も生き物ですから、他者と明確に区別するためには、あるていど階層的な名称が必要になるわけです。
家康しかり、サルモネラしかり。
「生き物に名前をつけて他と区別する」
というのは結構大変なことがわかります。
ちなみにサルモネラ ティフィムリウム の場合は
Salmonella enterica : 菌種
subspecies enterica : 亜種
serovar Typhimurium : 血清型
という内わけになっています。
ただ、あまりにも長いので普段は
Salmonella Thyphimurium
と略します。他のサルモネラも、
Salmonella Enteritidis
Salmonella Choleraesuis
などと略します。
略して表記するときはSalmonellaと斜体にする、という慣習があります。
現在サルモネラには2000以上の血清型があることが知られており、どのサルモネラに感染するかで症状も違ってくるわけです。
菌の世界、奥が深い。