南の往診獣医さんのブログ

往診獣医が獣医師ならではの視点で動物のこと、社会の出来事、その他の話題についてオリジナルイラスト付きで書いています。

獣医学と映画 (2) 〜300〜

「This is Sparta!!」
(「これがスパルタのやり方だ!!」)

セリフの主はレオニダス王。
映画「300」のワンシーンです。

待ち受けるわずか300人のスパルタ軍。
そこへ攻め寄せる100万のペルシア軍。
津波の如き大軍を、スパルタ軍は一糸乱れぬ陣形で何度も撃退します。

その陣形の名は「ファランクス (phalanx)」。

重装歩兵の左手に盾、右手に槍。
盾は、自分の左半身を守ります。
すると右半身が無防備になりますが、
右半身は隣の兵隊の盾が守ってくれます。

これを横一列に並べていきます。
その列を繰り返し縦に並べていくと、
多段式重装歩兵横隊が形成されます。

古代の会戦において、
ファランクスは圧倒的な打撃力を誇り、
多くの国家で採用されます。
また時代に応じて改良型ファランクス、マケドニアファランクスなどが派生し‥‥、

‥‥‥。

‥‥‥何の話でしたかね。

そうそう、「獣医学と映画」でした。
この「ファランクス」、
私にとっては懐かしい言葉なのです。

獣医学科1年生のとき手にした、
「家畜比較解剖図説」。

その目次を見てみると。

ありました、
「phalanx」。
なぜ、解剖学の本に歩兵陣形が載っているのでしょうか。

本文を見てみましょう。

いかがでしょう。
つまり、
ファランクス」=「指先の骨」
ということになります。
人間だと、
末節骨、中節骨、基節骨ですね。
手袋で言えば、指が入る部分です。

この部分こそ、本来の意味のファランクス。
しかし皆さん、握りこぶしを作ってみて下さい。
正面からじっと見ていると、
整列する重装歩兵が見えて来るではありませんか。

こうしてファランクスは解剖学用語から生まれ、
陣形を示す言葉として知られるようになりました。

そう考えると、古代ローマギリシア
ファランクス陣形が圧倒的な打撃力を誇った理由がわかります。

何せ、「拳」そのものなのですから‥‥。