南の往診獣医さんのブログ

往診獣医が獣医師ならではの視点で動物のこと、社会の出来事、その他の話題についてオリジナルイラスト付きで書いています。

オス猫と宍戸錠

さて、今日は写真からいきます。
オスでしょうか、メスでしょうか。

正解は、
オスです。

この子は往診先の駐車場にいた野良猫。
このあとすぐ逃げ出しましたが、
しっかりタマタマがついていました。
間違いなくオスです。

しかし猫を見慣れた人からすると、
タマタマを確認するまでもなく
「たぶんオスだな」
と推測できたはずです。
顔を見ただけで。

ポイントは、顔の横幅。
ほっぺたが、横に張り出しています。

猫は去勢されないまま成長すると、
性ホルモンの影響によって
ほっぺたが分厚くなってきます。
その結果、顔の横幅が広くなり、
「いかついイメージ」の顔になります。
ちょっと前の宍戸錠さんとでも言いますか。

「頰が横に張り出している」
ということは、オス猫にとって重要な事です。

まず第一に。
顔が大きく見えます。

するとライオンのたてがみと同じ原理で、
俺はビッグだぞ、強いぞ」
というアピールになります。

そして、第ニに。
横からの打撃に強くなります。
オス猫同士の喧嘩を見ていると、

至近距離での張り手の応酬
→取っ組み合いの咬みつき合い

というパターンが多いものです。
ただ、やはり最初の張り手の応酬で
「いててて」
となると、1ラウンド持たずに敗退です。

わかりやすい例があります。
国宝・沢瀉縅大鎧(おもだかおどしおおよろい)
を見てみましょう。

兜に注目です。
横に張り出している部分がありますね。
これは「吹き返し」と言って、
側面からの打撃を防ぐパーツです。
横から見てみるとこんな感じです。

確かに、この「吹き返し」があることで
側面からの打撃に耐えることができ、
もし正面から攻撃されても、
顔の角度を変えるだけで顔面を防御可能です。

オス猫もまた、これと同じ理屈で
頰が外側に張り出すというわけです。

生物というのは、実に面白いものです。