南の往診獣医さんのブログ

往診獣医が獣医師ならではの視点で動物のこと、社会の出来事、その他の話題についてオリジナルイラスト付きで書いています。

獣医学と歴史(5) 〜モンゴル帝国とペスト②〜

前回からの続きを。

1206年。
テムジンはモンゴル統一を果たし、チンギス=ハンの称号を与えられます。

モンゴル軍は西夏、金、西遼と周辺諸国を次々に撃破。
1221年にはインダス川を越え中東方面へ進撃を開始します。

さて、ペストについて初めて記述されたのは1339年。
場所は現キルギス共和国のイシク=クルでした。

1294年の時点で、すでにこの地域はモンゴル帝国の広大な版図の一部として組み込まれています。

東西8000キロに及ぶモンゴル帝国が誕生したことにより、大陸規模の治安の安定・交通の利便性が確保されました。
帝国内の街道は整備され、主要交易路には10里ごとに駅が置かれます。

おびただしい物資、沢山の家畜、大勢の人間がユーラシア大陸を移動し始めます。

このとき。
一地方に限局して存在していたであろうペストもまた、ノミとそれを運ぶネズミとともに遠征を開始します。

1346年。
クリミア半島・フェオドシヤ。

この地には当時、ジェノヴァが植民都市カッファを築いていました。
要塞化されたカッファを帝国の地方政権であるキプチャク・ハン国の軍勢が包囲。

圧倒的な騎兵の機動力でユーラシア大陸を席巻したモンゴル軍ですが、この時期には攻城戦のノウハウも獲得しており、ここに至るまでに多くの諸都市を陥落させています。

しかしこのとき、要塞を包囲するモンゴル軍の兵士が次々と謎の病に倒れ始めます。
そう、ペストの流行が始まったのです。
ところが彼らは攻囲を解き撤退することを選びませんでした。

謎の感染症が極めて致死率の高い疾病であることに気づいたモンゴル軍は、これを逆に利用することを思いついたのです。

それは、これから始まる恐ろしい出来事の序章に過ぎませんでした。

感染症は国境を越えていく。

‥‥次回に続きます。



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