イモリ 〜皮膚の毒とは〜
その毒性は青酸カリの約1000倍。
解毒剤なし。
生物の持つ神経毒として歴史的に有名。
その毒物の名は、テトロドトキシン。
フグの持つ毒として、毎年のようにニュースで取り上げられます。
ではここで、学研の「危険生物」という図鑑を見てみましょう。
全国に広く分布する、アカハライモリの説明。
「皮ふにはテトロドトキシンとよばれる毒があります」
と明記されています。
イモリはここ沖縄にも生息しています。
私も水路や湧き水の近くでよく見る、シリケンイモリ。
こちらもテトロドトキシンを持っています。
「げっ、じゃあイモリを触ったら死んじゃうのか!」
‥‥というわけではありません。
テトロドトキシンは微量にイモリの皮膚表面をコーティングしているだけなので、触っても人を死に至らしめることは無いと考えられます。
とは言え、イモリを触った手で目や口をさわったらどうなるか、という点については楽観的なコメントが出せません。
私はよく幼稚園や小学校に伺います。
講話や、うさぎの飼育に関する授業のためですが、教室にイモリの水槽を見かけることがあります。
明言しておきますが、イモリを飼うことに関しては反対しません。
しかし、飼育にあたっては正しい知識が必要です。
「イモリはテトロドトキシンを持っている」とお話すると、学校の先生方は非常にビックリされます。
「あの、フグの‥‥!」
「いえ、ごくごく微量ですよ」
「いやしかし、毒でしょう」
「毒です。しかし微量です。例えばホルムアルデヒドはシックハウス症候群の原因物質ですが」
「聞いたことあります」
「今、生徒さんが食べている給食のリンゴにも微量に含まれます。また、メタノールは失明の危険性のあるアルコールですが‥‥」
「失明‥‥!」
「果物ジュースやワインにも微量に含まれます」
ですからイモリを水槽で飼育して観察するぶんには、大きな危険性はないと考えられます。
ただし、やはり「正しい知識を持って」という視点は大事です。
もし学校側のスタンスとして生き物との触れ合いを重視していたとしても、
児童に「イモリの皮膚を触らせる」というような事があれば、それは危険だと言えるでしょう。
子供はよく自分の目や口を触りますから。
しかし残念なことに今の教育制度では、このような獣医学的な知見を教員の方に提供する機会や制度がありません。
この現状を改善することは生徒児童の皆さん、先生方、飼育される生き物にとっても有益だと思うのですが‥‥。