南の往診獣医さんのブログ

往診獣医が獣医師ならではの視点で動物のこと、社会の出来事、その他の話題についてオリジナルイラスト付きで書いています。

「種特異性」とは?

 

「この病気は人にうつりますか?」

飼い主さんからよく尋ねられる言葉です。


「種特異性」という言葉があります。

今回はこれついて書きましょう。


ある種の動物には感染するが、別の動物には感染しにくい場合、その病原体は「種特異性が高い」と表現します。

 

逆に多くの種にまたがって感染がおきる場合、その病原体は「種特異性が低い」ということになります。例えば、あらゆる哺乳類に感染する狂犬病ウイルスが該当します。

 

さて、では今回問題となっているコロナウイルスですが‥‥。

 

もともとコロナウイルスの種特異性は高く、種を越えて別の動物に感染することはまれだとされています。

 

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(コロナウイルス Wikipedia)

 

このブログでも、動物におけるコロナウイルス感染症の例として

 

・犬のコロナウイルス感染症

・猫の伝染性腹膜炎

 

を挙げました。

 

 

 

これらの病気は、人にうつりません。

 

もう少し生物学的に解説すると、犬のコロナウイルス猫伝染性腹膜炎ウイルスもα-コロナウイルスというグループに属します。

 

一方で、今回の新型コロナウイルス(2019-nCoV)はβ-コロナウイルスに属します。

 

他にγ-コロナウイルスδ-コロナウイルスというグループが存在しますが、感染するのは鳥類と魚類です。

 

ですから、コロナウイルスは種特異性が高い」という認識のもと、誤った情報に流されないことが大事だと考えます。

 

とは言え、このウイルスについては未知の部分も多いので、各自が慎重に情報を整理する必要があるでしょう。

 

非科学的な理由による不安視もいけませんし、根拠のない楽観もいけません。

 

 

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