南の往診獣医さんのブログ

往診獣医が獣医師ならではの視点で動物のこと、社会の出来事、その他の話題についてオリジナルイラスト付きで書いています。

「ペット犬に新型肺炎?」の報道について (1 )

 

「香港でペットの犬から新型コロナウイルス陽性反応」

という報道がありました。

 

 

きのう飼い主さんからもこの件について相談がありましたので、整理しておきます。

 

報道によれば、ペットの犬から採取したサンプルをPCR検査したところ、弱陽性を示したということです。

 

原文を見てみましたが、weak positive to COVID-19 virus とありました。

わずかとは言え新型コロナウイルスの遺伝子が犬から検出されたことがわかります。


プレスリリース(原文:英語)はこちらです。

 

ただ今回、飼い主がすでに新型コロナウイルスに感染していたという点は押さえておくべきです。

 

また、この犬から採取されたサンプルについても注目しましょう。

三か所からサンプルが採取されています。

 

口腔

鼻腔

直腸

 

です。

 

このうち、PCR検査で陽性を示したのは

口腔鼻腔から採取されたサンプルです。

 

 

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(画像はイメージ)

 

 

犬は口や鼻を飼い主に近づける習性があります。

つまり今回、飼い主が感染者ですから飼い主のウイルスが犬の口や鼻に付着した可能性を考慮せねばなりません。

 

あるいは逆に、「すでに犬が感染していて、口や鼻を飼い主に近づけて感染させた」という考え方もあります。

しかし「では、その犬はどこから感染したのか」という点を考えると、可能性は低いと考えられます。

あるとすれば野生動物との接触ですが、飼育下の犬が野生動物と濃厚接触をするとは考えにくいからです。

 

 

つまり現時点では、

「犬にも感染し、犬の体内でウイルスの増殖が起こっているのか」

それとも

「人の出したウイルスがたまたま犬の口と鼻に付着していたのか」

の判断がつきません。

 

香港政府による調査が引き続き行われています。ちなみに、この犬は今のところ無症状だそうです。

 

まとめると、

「現時点では人から犬、犬から人に感染するという明確な証拠はない」

という事になるでしょう。

 

ともかく、デマの拡散は非常に危険です。

信頼できる報道を注視しましょう。

WHOのURLをのせておきます。

 

WHO | World Health Organization

 

理論的に考え、落ち着いて行動しましょう。

 

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