南の往診獣医さんのブログ

往診獣医が獣医師ならではの視点で動物のこと、社会の出来事、その他の話題についてオリジナルイラスト付きで書いています。

「猫も新型コロナ感染」の報道について

 

また大きな問題が持ち上がってきました。

飼い主から猫に新型コロナ感染

ベルギーで3月27日に確認された事例です。

 

 

これが事実だとすると‥‥

本来はトップニュース級の扱いです。

 

すでに稀なケースとして香港では犬への感染が確認されていますが、猫となると話が大きく違ってきます。

 

犬と違い、猫は市町村への登録義務もなく、放し飼いも多く見られます。

そもそもいわゆるノラ猫を含む野生個体も多く、ひとたび感染症が拡散するとコントロールは極めて困難です。

人に移動制限は掛けられますが、猫は人の法の及ばないところで生きています。

 

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ましてや今回は感染した猫にも症状があったということですから、ウイルスが猫の体内で増殖していたと考えられます。

 

私は獣医師として、皆さんのご家庭の猫のことももちろん心配です。

 

そして猫が新型コロナウイルスを保持し症状を有するとなると、それを診察する獣医師だけでなく動物看護師・愛護団体やボランティアの方々に「自分の命と健康を守るためどうすればよいか」のガイドラインも必要になってくるでしょう。

 

ただ、現時点では情報がきわめて断片的です。

 

私はPCR検査に従事した経験のある一獣医師に過ぎません。

しかしその私でも、

 

・猫からの検体採取はどのようになされたのか

PCRはどのような条件下でなされたのか

コンタミネーション(試料汚染)の可能性はないのか

・複数回の検査による確実性の高い診断なのか

 

といったような、本来は一番重要な情報が欠けている点に違和感を覚えます。

 

先ほども動物愛護団体の方と電話で話しました。

「猫が捨てられるようなことにならなければ良いけど‥‥」と当惑しておられました。

 

外出やイベントの自粛で、犬猫の譲渡会が止まってしまっている状況。

そこへきてこの報道です。

 

ともかく「新型コロナウイルスの猫への感染」は動物由来感染症の観点から、本来もっと大きく扱われるべきニュースです。

 

しかし同時に、

「ハッキリした情報がそろった時点で初めて世に出るべき知らせ」

でもありました。

 

過度な不安と混乱はウイルスそのものより恐ろしいからです。

 

現時点でできることは「衛生対策を行いながら、詳しい情報の収集につとめる」ということでしょう。

猫に罪はありません。

パニックにならず、続報を待ちましょう。

 

 

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