「昭和」への往診 〜ハッピーエンド〜
以前、「昭和」への往診というタイトルでご紹介した、ミニチュアピンシャー。
この子が先日、新しい家庭に迎えられました。
四方八方手を尽くして下さった方々のおかげです。
この子は那覇育ちですが、新しい人生は北海道で始まるそうです。
ご協力・ご支援いただいた方々、ありがとうございました。
この子の場合もそうですが、「譲渡先を探す」という活動はますますボーダーレスになってきています。
昔はそれこそ、
・親戚がもらってくれた
・近所の人が引き取った
などが主流でした。
しかし最近は沖縄で保護された子でも「大阪で家族が決まった」とか「神奈川の里親さんの所へ行った」などが当たり前です。
都道府県、ときには国の枠を越えて行き先を見つけ、その後の確認までする愛護団体さんやボランティアの方々には本当に頭が下がります。
そして、この流れの中に身を置く獣医師として常に思うことは、
「局地的な感染症を拡大させてはいけない」
ということです。
前回、レプトスピラについてお話しました。
やはり地域ごとに「その地域で多く見られる感染症」というものが存在します。
沖縄であればレプトスピラ、犬のパルボウイルス、それからマダニも沖縄独特の分布をなす種類がいます。
参考までに、レプトスピラの発生状況を載せておきます。
圧倒的に沖縄県が多いですね。
(モダンメディア 52 巻 10 号 2006[話題の感染症)
譲渡される動物を「感染症の運び屋」にさせるわけにはいきません。
最悪の場合、行った先が新たな蔓延の起点になってしまいます。
沖縄からの譲渡の流れも先細りになるでしょう。
譲渡先の地域で病気が広まれば、もちろんその地域の動物も不幸になります。
そして動物から人にうつる病気がいかに多いか。
それはこのブログをご覧になっている方はよくご存知のことと思います。
ですから、保護された動物に対しては
「早く新たな家庭で幸せに過ごしてもらいたい」
という人間的な感情を抱きながらも
「病気を拡散させるわけにはいかない」
という獣医師としての視点を欠くわけにはいきません。
保護された動物の命。
保護した人の健康。
譲渡先の公衆衛生環境。
色んなものを守らないといけない、そこに獣医師の仕事の難しさがあります。
それ故に、その子の新しい人生が始まったと聞くと、良かったなと、ささやかにグラスを傾けたくなるのです‥‥。
‥‥‥あ。
お酒飲めないんだった。
瑞泉 30度泡盛「御酒(うさき)」720ml 【沖縄県那覇】2009 |