南の往診獣医さんのブログ

往診獣医が獣医師ならではの視点で動物のこと、社会の出来事、その他の話題についてオリジナルイラスト付きで書いています。

獣医学と歴史(2) 〜マラリアと仏教〜

数日前にマラリア関連のニュースがありました。

http://news.livedoor.com/article/detail/16090688/news.livedoor.com


マラリアはハマダラカという蚊が媒介する
寄生虫症です。

家畜やペットから直接することはありませんが、
蚊は分類上、「節足動物」ですので
このブログでおなじみ
「動物由来感染症
ということになります。

熱帯・亜熱帯の地域で流行し、
沖縄ではかつて多くの死者を出しました。

近年は「輸入マラリア」といって、
海外滞在中に感染し帰国後に発症する、
というパターンが毎年報告されます。
死亡例もありますので、
早期の治療が必要な感染症だと言えます。

さて、意外なところでは
平清盛マラリアで命を落とした」
という説があります。

平安時代末期、特に治承年間というのは
歴史的に異常に暑い年代だったらしく
内地でもマラリアが発生していたようです。

・震えを伴う高熱
・数時間後に突然、平熱に戻る
・数日後に再び高熱が出る

これらマラリアに典型的な症状について
詳細な記録が残されています。
当時はこれを「瘧(おこり)」と称しました。

平清盛もまた、
比叡山から運ばせた冷水が熱水に変わるほどの」
高熱を発して死亡したと伝わります。

有効な薬剤のない、当時の治療のメインは加持祈祷。
先程述べたように、マラリアによる高熱は
高熱期〜解熱期を繰り返します。
そのことを知らない人々は
「加持祈祷のたびに軽快する!」
という認識を持ったかも知れません。

浄土宗、浄土真宗時宗臨済宗曹洞宗日蓮宗
鎌倉時代には現代に残る新しい宗派が生まれています。

平安時代末期から鎌倉時代にかけて、
社会全体が混乱し、人々が何かにすがろうとした時代。

仏教の枠組みを大きく転換させた要因の一つに、
マラリアの蔓延があったのではないかな‥‥
と、そんなふうに思います。