南の往診獣医さんのブログ

往診獣医が獣医師ならではの視点で動物のこと、社会の出来事、その他の話題についてオリジナルイラスト付きで書いています。

マンソン・レットウ・ジョウチュウ

何となく、その響きに趣がある。
どの業界にも、そんな言葉があります。

経済学なら「コンドラチェフ波動」、
遺伝子工学なら「セントラルドグマ」、
料理なら‥‥「ビーフストロガノフ」。

獣医領域にも色々ありますが、
たまたま飼い主さんとの会話に出たので、
今日は

「マンソン裂頭条虫」
(マンソン・レットウ・ジョウチュウ)

をご紹介しましょう。

何とも怪異な文字ヅラですが、
つまるところは「条虫」という
寄生虫の一種です。

この寄生虫が見つかったのは1882年。
その場所はアモイ、
発見者は医師のパトリック・マンソン。

ちなみにこのマンソン先生、
フィラリア症は蚊の媒介により伝播する」
という事実を発見したことでも有名です。

さてこの寄生虫
日本に分布しているでしょうか。

答えは、イエスです。
ほぼ世界中に分布します。

日本国内では
都市部の犬や猫にはあまり見られませんが、
郊外の犬や猫は感染率がぐっと上がります。

なぜか?

それは、この条虫が
ヘビ、カエル、魚などに潜んでいるから。
外に出る猫や、散歩中の犬がこれらを食べる。
すると、感染リスクが上がります。

さらにさかのぼると、
この条虫はもともと「ケンミジンコ」という、
ミジンコの一種に寄生しています。

そこからカエルや魚に移り、
これらを食べた動物に感染します。

動物での症状は胃腸管障害が主ですが
マンソン裂頭条虫は体内を移動するので、
移動する先々で組織や器官を傷害します。

犬や猫では駆虫薬がありますので、
これを飲ませて治療します。

この条虫はまた、人にも感染します。
マンソン孤虫症と言って
動物由来感染症の一つに数えられます。

予防法としては

ヘビ、カエル、川魚などは生食しない
ケンミジンコのいる恐れのある水は飲まない
動物の排泄物を素手で触らない

これらの事に注意しましょう。
では、忘れないようそっと呟いておきますか。

マンソン、レットウ、ジョウチュウ。