南の往診獣医さんのブログ

往診獣医が獣医師ならではの視点で動物のこと、社会の出来事、その他の話題についてオリジナルイラスト付きで書いています。

ちょっと変わった講演

沖縄県医師会館で行われた、
〜動物由来感染症としてのSFTS講演セミナー〜
に参加してきました。

SFTSについてはこのブログで何度か取り上げましたが
我々獣医師含め、動物との関わり合いのある人たちは
看過できない感染症です。

oushinjuui.hatenablog.com


今回の講演で得た知識は、また整理してから
わかりやすくお伝えしたいと思います。

さて今回の講演会は、ちょっと珍しいものでした。

「診察された側」と
「診察した側」が両方発表したのです。
つまり、どういうことかというと。

宮崎県内の動物病院に勤務しておられる獣医師が
「業務中の感染と思われるSFTSを経験して」
というテーマでご講演。

この先生は、SFTSウイルスに感染した猫を治療中に
自らもSFTSウイルスに感染された方です。
40度近い発熱・意識障害で緊急外来から即入院、
という危険な状態を経験されました。
つまり、お医者さんに診察された側です。

「どのような経緯で猫から感染を受けたか、
自らはどのような症状だったか」
を中心にお話がありました。

次に、その獣医師を診察した医師が、
「ペットから人へのSFTSウイルス感染症が強く疑われる事例」
について講演なさいました。
「感染した人間の症状や、血液検査上の特徴」
などのお話がありました。

要するにこのお二人は
「動物のSFTSを治療したら自分も感染した獣医師」と
「その獣医師のSFTSを治療した医師」。
診察された側と、診察した側が
同じ会場で続けて発表したわけです。

これはたしかに珍しい現象です。
しかし、「動物由来感染症
の本質をよく表している現象でもあります。

・ヒトの感染症のうち、動物由来感染症の割合は60%
・特に新興感染症に限れば、そのうち動物に由来する割合は75%
(国際獣疫事務局)

病気の動物と接する機会の多い獣医師は、
動物由来感染症への知識を常に
アップデートしていかねばなりません。

そしてまた、その情報を飼い主さんはじめ
動物と接する一般の方々にも、隠すことなく
お知らせせねばなりません。

そのためには
・人
・動物
・環境
に関わる職域の人たちが連携して、
動物由来感染症に対峙する
「One Health」
という考え方が非常に重要になってきます。

動物も守る。
人も守る。

久しぶりにセミナーに出ましたが、
身の引き締まるような夜でした。