なぜ?フィラリア感染犬に「予防薬」②
前回、
「フィラリア感染犬にも予防薬を飲ませる理由」
についてお話しました。
今日は注意点を解説しておきます。
まず、押さえておかねばならないのは
フィラリア予防薬にはさまざまな種類がある
ということです。
(フィラリア予防薬の一部: ノミ・マダニや消化管内寄生虫の駆除効果とセットのものもある)
イベルメクチン、ミルベマイシン、モキシデクシン、セラメクチン‥‥。
さて、どう使い分けるか‥‥。
これを考えるのが獣医師の仕事です。
フィラリア陰性ならば特に大きな制約はありません。
しかしフィラリア感染犬に対しては、
選ぶ薬が生死を分けます。
なぜなら、薬によって
「殺すフィラリアのステージが異なる」
からです。
たとえば、これはミクロフィラリアといって、いわばフィラリアの赤ちゃんです。
赤く見えるのは赤血球。
ミクロフィラリアはこの間をのたうちまわっています。
イベルメクチン、ミルベマイシンなどの予防薬は、このミクロフィラリアを死滅させる作用の強い薬です
「何だ、死滅させる方がいいじゃないか」
ところがそうでもありません。
死滅したミクロフィラリアは完全な異物ですから、激しい副作用が起こることがあります。
ショック状態に陥り、死に至るケースも‥‥。
一方で、モキシデクチンなどはミクロフィラリアに対する作用が弱い薬です。
ターゲットは「少し成長した段階のフィラリア幼虫」。
成長途中のフィラリア幼虫はミクロフィラリアより数がずっと少ないので、殺しても宿主へのダメージが少ないわけです。
つまり、感染犬への予防薬は
「成長途中のフィラリア幼虫をやっつける」
というものが選択されねばなりません。
もちろん、その薬剤の選択は獣医師が行います。
中にはフィラリア予防薬と同時にステロイドや抗生剤など、他の薬剤の併用が必要な陽性犬もいます。
危険なのは、
「おたくのフィラリア予防薬、きれたの?うちのはまだ余ってるから、どうぞ」
というようなパターンです。
陰性の子にしか使えない薬を、陽性の子が飲むようなことがあってはなりません。
くれぐれも、ご注意を‥‥。
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