南の往診獣医さんのブログ

往診獣医が獣医師ならではの視点で動物のこと、社会の出来事、その他の話題についてオリジナルイラスト付きで書いています。

猫から猫へ? 新型コロナ続報①

 

「猫から猫へ新型コロナウイルスが感染する」という報道があります。

2020年4月1日、イギリスの大手一般紙「ガーディアン」が報じました。


 

記事から抜粋すると

The team, at Harbin Veterinary Research Institute in China, found that cats are highly susceptible to Covid-19 and appear to be able to transmit the virus through respiratory droplets to other cats.

訳) 中国のハルビン獣医学研究所は猫がCovid-19の感染を受けやすく、呼吸飛沫を介して別の猫にウイルスを感染させうることを発見した

 

ガーディアンの記事の中にある「ハルビン獣医学研究所」は3月30日にバイオアーカイブ上でこの研究結果を発表しています。

原文はこちらで読むことができます。

https://www.biorxiv.org/content/10.1101/2020.03.30.015347v1.full.pdf

 

この中で同研究所は猫から猫へ新型コロナウイルスの感染が起きることを確認しています。

 

前回のブログで「ヒトから猫への新型コロナウイルス感染」の事例について書きました。

 

今回ハルビン獣医学研究所が明らかにした猫から猫への感染の意味するところは、

 

ヒト→猫→猫→猫→‥‥

 

という感染拡大の可能性が出てきた、ということです。

 

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だだ、今回の論文の投稿先であるバイオアーカイブ(bioRχiv)プレプリントリポジトリ、すなわち査読が終わっていない論文を扱う場です。

 

そう言った意味では、ベルギーの事例も今回のハルビンの研究結果も、より慎重な検討が必要だと考えます。

 

すなわち例数としては少なく、臨床例として多角的な検証もなされたとは言えないからです。

 

そして大事なことは、

猫からヒトへの感染は確認されていない

ということです。

続報を待つしかありません。

 

そして、いま我々ができることは

・ヒトから猫への感染を防ぐ

・猫を外に出さない

ということでしょう。

 

ひとたび外に出た猫の行動範囲は広く、不特定多数の猫やヒトと接触します。

ハルビン獣医学研究所が言うように、仮に猫が新型コロナウイルスの感染を受けやすく、猫同士で飛沫感染するということであれば‥‥。

野外の猫でひとたび拡散したウイルスを終息させるのは非常に困難と考えます。

そうすると、猫という生物と人間との付き合い方が根底から覆る可能性が出てきます。

 

とにかく、猫を外に出さずに、より詳しい情報を待ちましょう。

 

そして同じように必要なのは、人類の知恵と協調性です。

皮肉なものですが、有史以来はじめて全世界が団結すべき共通の敵が現れました。

人類同士の不毛な争いはやめて、ヒトと動物を守るために協力しましょう。

 

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