南の往診獣医さんのブログ

往診獣医が獣医師ならではの視点で動物のこと、社会の出来事、その他の話題についてオリジナルイラスト付きで書いています。

「ペット犬に新型肺炎?」の報道について(2)

 

先日、

「ペット犬に新型肺炎?」の報道について(1)

という題で香港での事例について書きました。

 

 

このときは

「人⇒犬への感染がおこったかどうかは確定的ではない」

という見解が示されていました。

 

しかし3月4日、香港政府は

「人から犬への新型コロナウイルス感染が見られた」

と発表しました。

(原文:the dog has a low-level of infection and it is likely to be a case of human-to-animal transmission

 

「低レベルの感染」という表現をとっており、感染を受けた犬は症状を呈していません。

全文はこちらで読めます。

 

https://www.info.gov.hk/gia/general/202003/04/P2020030400658.htm

 

要約すると、

 

・2/27, 2/28, 3/2 と繰り返しこの犬を検査した 

・その結果、弱いながらも新型コロナウイルス陽性であった

香港大学公共衛生学院、香港城市大学動物医学及び生命科学院、国際獣疫事務局の専門家で検討し、「犬における低レベルの感染」と結論づけた

感染犬には何の症状も見られないが、隔離して検疫中である

・犬への検査を継続していく

現在、ペット動物から人への感染を示す証拠はない

 

率直な感想としては、もう少し詳しい説明が欲しいところです。

 

果たして、「人から犬への感染はどの程度起こりやすいのか」。

 

世界的にヒトの感染者数が増加している中、「犬への感染は香港でしか起きない」と考えるのは非論理的のように感じます。

 

現実的には「人の検査だけで手いっぱい。犬の検査まではとてもできない」という状況でしょうから、どの程度ヒト→犬感染が起きているかは全くの未知数だと推察されます。

 

現在、日本の人口は約1億2600万。

犬の飼育頭数は約900万。

14人に1人が犬を飼っている計算になります。

 

「飼い主から犬に感染がおきる」という事例が相次いで報告された場合、飼い主だけでなく犬も隔離する必要が出てくるでしょう。

 

感染者が増えれば増えるほど、感染者が飼っている犬の数も増えます。

 

飼主が入院した場合、残された犬をどうするのか。

犬を隔離する場所はどこなのか。

検査を担当するのは誰なのか‥‥。

 

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(放し飼いの犬: 非常時にはより一層、飼い主の自覚が求められるのだが‥)

 

問題は山積ですが、まずは

 

「人⇒犬の感染はどの程度おこりやすいのか」

 

の情報を集積することが重要だと思います。

幸い、コロナウイルスは種を越えて勢力を広げることがあまり得意でないウイルスです。

 

今回の香港の事例を見ても、

「犬にウイルスが感染した」

ところまでは読み取れますが、

「犬の体内でウイルスが増殖し、排出されている」

ことを示す記述が見当たりません。

続報を待ちたいところです。

 

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