南の往診獣医さんのブログ

往診獣医が獣医師ならではの視点で動物のこと、社会の出来事、その他の話題についてオリジナルイラスト付きで書いています。

「四つのなぜ」とは?

昨日は幼稚園に行ってうさぎを見てきました。

ふと、

ティンバーゲン博士」

のことを思い出したのでまとめておきます。

 

 ニコラース・ティンバーゲン

オランダの動物行動学者です。

 

f:id:oushinjuui:20181201231425j:image

 

1973年、ノーベル医学生理学賞を受賞。

ちなみにその4年前、兄のヤンも

ノーベル経済学賞を受賞しています。

 

さて、このティンバーゲン博士。

ある大発見をしています。

それは

「子供に動物のことを語るとき」、

必ず理解しておくべきことなのですが‥‥。

 

ここで逆に私が子供になって皆さんに質問してみます。

「犬は、どうしてお手ができるの?」

と。

 

さあ、どのように答えればよいでしょう。

 

 結論から言いますと、

「答えは四つ準備されねばなりません」。

そう、犬がお手をする理由の説明には、

答えが四つ必要なのです。

 

そしてこれこそが、

ティンバーゲン博士の発見したことなのです。

 

具体的に見ていきましょう。

「犬がお手をするのはなぜか」

 

回答1.「ご褒美がほしいから」

回答2.「腕の筋肉や神経が、お手のできる構造になっているから」

回答3.「お手をすればいいことがあることを学習したから」

回答4.「お手ができる(人間と仲良くできる)性質の犬が子孫を残してきたから」

 

どうでしょうか。

どれかだけが正しいわけでもなく、

どれかが間違っているわけでもありません。

回答の切り口が違うのです。 

 

つまり、こういうことです。

回答1<ご褒美がほしいから>は

「行動の直接的な理由」(究極要因)

 

回答2<筋肉や神経の構造>は

「行動を成しうる解剖学的な理由」(至近要因)

 

回答3<学習したから>は

「個体としてその行動を獲得した理由」(発達要因)

 

回答4<性質だから>は

「種としてその行動を獲得した理由」(系統進化要因)

 

 いかがでしょうか。

 

犬がお手をする、というのは一例にすぎません。

ティンバーゲン博士の功績は、

「生物がとる行動には、四方向からの説明がなされねばならない」

という概念そのものを提示したことにあります。

 

数学や物理学では、なぜ?に対する回答が

1つであることが多いはずです。

 

しかし相手が生き物になるとそうではない。

実際、小学校の講話では、

子供たちの柔軟な発想にいつも驚かされます。

 

皆さんも、もし小さいお子さんに

動物について何か尋ねられたら。

 

自信をもって答えたはずなのに、

子供がどうも納得していないようなら。

このことを思い出してみてください。

 

f:id:oushinjuui:20181202000212j:image