南の往診獣医さんのブログ

往診獣医が獣医師ならではの視点で動物のこと、社会の出来事、その他の話題についてオリジナルイラスト付きで書いています。

学校飼育動物を考える (4)

いわゆる「動物愛護法」には、

「学校は動物愛護の普及啓発の場」

であることが明記されています。

この動物愛護法は飼育動物にも適用されます。
当然、「学校」飼育動物にも…。

その一方で、獣医師会には
「学校でうさぎが増えすぎて困っています」
「立て続けにうさぎが死んでしまいました」
といった相談が毎年寄せられます。

中には、
「予算がないので、無料で治療してもらえる病院を紹介してもらえませんか」
というのもありました。

さて、このとき。
皆さんが獣医師なら、どう答えるでしょう。

「愛護法違反ですよ!何やってるんですか!」
「予算もなく動物を飼う人間がいますか!」

怒りを学校に向けるでしょうか。
電話越しに、厳しい言葉を投げかけるでしょうか。

あるいは、冷静に文書を作るでしょうか。
「早急に対策されるようお願い申し上げます」
これを関係部署に送るでしょうか。

色々方法はあろうかと思います。
私の場合、使ったのは「足」でした。

まず、現場に行ったのです。
往診するのが私の仕事ですから。
とにかく、何度も。
何年もかけて、何校も回りました。

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たくさんの校長先生、教頭先生と話しました。
飼育担当の先生とも、
飼育委員会の子供たちとも。

現場で顕微鏡を覗きこみながら、
中越しにチャイムの音を聞きました。
昼休みの校内放送も。
終業の音楽も。

飼育小屋の前で、うさぎを観察しながら昼食を摂ったこともあります。
職員室に招き入れられ、給食をいただいたこともありました。

学校の先生方や生徒さんと話す時間。
そして飼育小屋のそばで過ごす時間。
それらが蓄積していったとき。

ようやく、わかって来たのです。

学校を責めてはいけない。
ましてや担当の先生を責めてはならない。
これはもっと複数の機関を含めた、
システムの問題なのだ、と。


以前、往診は時に動物の体を越えていく、
というお話をしました。


oushinjuui.hatenablog.com


そう。
事件は学校で起きているが、それはこの問題の表層にすぎない。
本質的な問題は、もっとその奥にある。
そこまでアプローチしないと、この状態は永遠に繰り返される…。


飼育小屋の前で土を払って、往診バッグを担ぎます。
鐘の音を背に私が向かった先は、市役所でした。

次に続きます。