往診獣医の事件簿5 〜16日は何日?〜
毎年、この時期になると思い出すこと。
まだ、沖縄で往診を始めて間のないころのお話です。
「来月の往診、15日ごろ伺いましょうか」
「先生、15日は16日ですよ」
「えっ??」
「16日は、忙しいです」
「いや、ですから15日に伺えればと」
「15日は16日なんですよ。うちは、キュウでやるんです」
「?????」
この会話、沖縄の方は問題ありませんね。
しかし本土の人には全く意味がわかりません。もちろん私もそうでした。
さて、どういうことでしょう。
ここ沖縄では、多くの行事が旧暦に沿って進行していきます。
すると
「旧暦の1月16日は新暦の〇月△日」
といった具合にズレが生じ来るわけです。
このズレは毎年変わります。
つまり
「旧暦の1月16日は、新暦でいつなのか」
は年ごとに違います。
ではなぜ1月16日にこだわるのか。
それは、沖縄では1月16日が「あの世の正月」だからです。
正式な発音としては、
「ジュウルクニチー」です。
この日に祖先を供養する風習が、沖縄各地で見られます。
ちなみに今年、旧暦の1月16日は新暦の2月20日にあたります。
ただし、旧暦に当てはめずに新暦の1月16日にジュウルクニチーを行う地域や家系もあります。
さらには、旧暦、新暦の両方の1月16日をジュウルクニチーとして2回行うところもあります。
「このお家ではどのようになさるのかな」
という事は、この時期把握しておく必要があります。
沖縄は祖先崇拝の慣習が非常に強い所です。
とにかく、失礼のないように。
往診の予定ひとつ組むにしても、こちらの風習に通じていなければならない、というわけです。