南の往診獣医さんのブログ

往診獣医が獣医師ならではの視点で動物のこと、社会の出来事、その他の話題についてオリジナルイラスト付きで書いています。

何に咬まれた?

ここ沖縄で
「庭先に出た猫が足を引きずって帰ってきた」
「片方の足と比べて二倍ほどに腫れている」
とくれば
「ハブか?!」
となります。

とりあえず、
往診の順番を入れ替えて急行します。

う〜ん、
ちょっと違うような‥‥。

ハブの場合、もっと腫れます。
それに今回は、咬まれた跡も見当たりません。
入念に触診すればもっとはっきりしますが、
痛みが強いらしく触らせません。

何にせよ、
「急に腫れた」
という事ですのでハブ説は捨てきれません。
ムカデ、その他の害虫の可能性もあります。

急性細菌感染症の可能性も考慮して、
ステロイドと抗生剤で攻めることにしました。

これに関連して、注意喚起しておきましょう。
とくに観光客、内地からの移住者の方。

「冬だからハブはいない」
という考えは誤りです。

沖縄県衛生環境研究所から出ている、
沖縄県における平成 29 年の毒蛇咬症」
を見てみましょう。
月別のデータになっています。

12月、1月、2月にも咬症例があります。
冬季3ヶ月の合計咬症数は12件。
年間全体の約20%を占めます。

そして、気温が上がってくる
3月、4月、5月の合計も同じく12件。
つまり平成29年で見れば、

「咬症例の約20%は冬に発生した」
「その発生状況は春と同レベルであった」

ということがわかります。

確かに夏〜秋に発生件数は増加していますが、
激増というほどでもありません。
もっとも、この時期は皆さん警戒しますから、
リスク回避の結果なのかも知れませんが‥‥。

ともかく今年は記録的な暖冬ですので、
ハブも活発に動いている可能性があります。

「冬だから」と油断せず、
むやみに草むらや林の中に入らぬように、
犬の散歩の際にも深い茂みに入らせぬように、
十分注意しましょう。