南の往診獣医さんのブログ

往診獣医が獣医師ならではの視点で動物のこと、社会の出来事、その他の話題についてオリジナルイラスト付きで書いています。

「次は何日に」までの道のり

往診という診療形態は、
基本的には非常に効率の悪いものです。

・行ったら動物が逃走していた
・飼い主さんが予約日をお忘れになっていた
・直前でキャンセルになった

こういったことは日常茶飯事で、
予定通りにはまずいきません。

そもそも「予定」を立てること自体が、
実はかなり熟練を要する作業なのです。

たとえば、ある町で皮膚病の犬を診たとします。
再診は3日後なのか5日後なのか。
いや、明日もう一度診た方がいいのか。
何年かのキャリアがないと、まずこれができません。
仮に、5日後に再診することとします。

しかし5日後に、別の遠い町で
猫を診る予定があるとしたら。
移動のタイムロスを考えて、
できれば皮膚病の犬と猫を
午前、午後で振り分けたいところです。

そして、その移動中に経由する形で別の動物を診る、
というような動線を組まないと
移動に余分な時間を取られることになります。

こんな調子で動物を診るごとに、
・病状
・飼い主さんのご都合
動線
をすり合わせてこの子は3日後、この子は4日後と
再診の日程を組んでいきます。

新規の往診依頼も来ます。
新規の場合は行ったことのない場所ですし、
状態が良くわからないですから
到達にかかる時間・問診にかかる時間を
長めに確保しておかねばなりません。

仮に、ベストな往診スケジュールが組めても
「急な症状で今日中に来て欲しい」
という電話も来ます。
そのための時間的余裕も持たせておかねばなりません。

つまり、

・その病気は何日後に再診すればよいか
・その病気の検査・処置に何分かかるか
・次の往診地点まで何分で移動できるか
・その動線は一番無駄のない経路であるか
・その経路は渋滞の時間・区間を避けているか
・急患に対応しうる、若干の余裕を持たせてあるか

こういったことを数日先まで予測し、
診察をこなしながら何日分かの予定を
「同時並行的に」
組んで行かねばなりません。

これが出来ていないと
地に足のついた往診になりません。

・5日後再診と決めた子が、翌日に苦しんで呼ばれる
・採血に手間取って検査も処置も時間切れ
・道に迷って渋滞にハマる
・急患の子を見捨てる

往診車がポンコツなのはまだいいとして、
獣医師がポンコツではいけません。

動物の病気のこと、
飼い主さんのお仕事の日や勤務時間、
週間天気予報、
そして土地勘。

諸条件が全部頭に入って初めて、
「次は、何日の何時ではいかがでしょう」
という言葉が言えます。

ですから狂犬病の注射一本うちに行くにしたって、
それなりに頭を使うものです。

休む間も無くハードルを跳び越え続ける日々ですが
それでも私は、この仕事が好きです。