南の往診獣医さんのブログ

往診獣医が獣医師ならではの視点で動物のこと、社会の出来事、その他の話題についてオリジナルイラスト付きで書いています。

獣医学と料理 (2) 〜チムシンジ〜

「獣医学と料理」シリーズの2回目。

今回は
チムシンジ
です。

響きからすると韓国料理っぽいですが、そうではありません。
沖縄の郷土料理です。

チム=きも(肝)
シンジ=煎じ

つまり、豚肉やレバーを野菜とともに煮込んだ汁物を言います。
「煎じる」という言葉が示すように体調を崩した時の療法食として、沖縄ではよく知られた料理です。

出典 http://www.ma-san-meet.jp

チムシンジは鉄分やビタミン、アミノ酸の豊富なスープですから、大変滋養に良い料理です。
ただしそれは「人間にとって」です。
これを動物に与えてよいでしょうか。

どれどれ、では実際に往診の現場に行ってみましょう。
一匹の犬がつらそうにしています。
ここ数日、食欲がないそうです。
飼い主さんは「少しでも食べやすいものを」と、ご自身で療法食を作ったようです。

「この、スープみたいなのは何です?」
「シンジです」
「しんじ?」
「はい、チムシンジ」

どれどれ、とお鍋の中をちょっと覗かせてもらうと。

豚レバー、豚肉。
それに黄色い島ニンジン。
いいですね、美味しそうです。
しかしここからが問題です。

青ネギ。
香りづけに、ニンニク。

これはいけません。
犬も猫も、ネギは有害です。
ニンニクも基本的にはあげない方が良いでしょう。

シンジはいわゆる家庭料理ですから、材料や作り方は色々です。
しかし伺って回ると、ネギを入れたり、ニンニクの香りで食欲をそそらせたりする方法は珍しくないようです。
人はこれで良いのですが、犬も猫もこれではたまりません。

犬や猫の「食欲がない」という主訴はよくあります。
現場に着いてみると、お皿の中にはペットフード以外のものが結構入っています。
どれも食べませんでした、という具合です。

何でもいいから食べてほしい、という気持はよくわかります。
しかしまずは診断してもらうことが先ですね。
栄養をつけさせるつもりが、かえって毒物を与えてしまった、ということのないよう。
飼い主の皆さん、ご注意下さい。