南の往診獣医さんのブログ

往診獣医が獣医師ならではの視点で動物のこと、社会の出来事、その他の話題についてオリジナルイラスト付きで書いています。

猫ひっかき病 (2)

猫ひっかき病 (1) の続きです。

・病原菌のバルトネラは猫の血液中にいる
・猫の爪の先にほとんど血は流れていない
・ではなぜ人はひっかかれて感染するのか?

という疑問が生じたところで、
前回を終えたのでした。

話を続けましょう。

まず、ノミの行動をよく見てみます。
いま、ノミが猫の血を吸っています。
あ、ウンチしました。
ノミだって、ウンチします。

f:id:oushinjuui:20190118003725j:plain

この黒いのがウンチですね。
はい、ここまで。

おわかりでしょうか。
今、実に重要な場面でした。

ノミは猫の血と共にバルトネラを吸い上げ、
そのバルトネラがノミの糞に混ざって
猫の皮膚の上に排出されたのです。

この時点でバルトネラは、
猫の体表に移動した事になります。

さて次は、猫の行動をよく見てみましょう。
ほら毛づくろいを始めましたよ。

あっ!
さっきノミの糞があった所を舐めちゃった‥‥。
ありゃ。そのあと、手も舐めています。
はい、ここまで。

おわかりでしょうか。
今のも、決定的な場面でした。
毛づくろいによって、
体表にいたバルトネラが猫の口に入りました。

そして、今度は唾液と共に
「爪の先」に運ばれてしまいました。

この状態で猫にひっかかれると、
バルトネラを直接注入されることになります。

この一連の光景から、
「猫ひっかき病」は猫に
「咬まれても」感染成立する事がわかります。

糞を舐め取ったことにより、
バルトネラは猫の口にも移動したからです。

ここまで見てくると、
「猫からノミを取り除いておく」
ということが公衆衛生上、
いかに重要かがわかります。

また、
「猫ひっかき病」は「猫」に
「ひっかかれなくても」感染する
ということもわかりますね。

次回、
「猫にひっかかれて感染する」
以外の経路についてお話して、
猫ひっかき病はひとまず終わりにしましょう。