南の往診獣医さんのブログ

往診獣医が獣医師ならではの視点で動物のこと、社会の出来事、その他の話題についてオリジナルイラスト付きで書いています。

猫ひっかき病 (1)

「何!犬に咬まれた?君は、犬咬みつき病だ!」

「キツツキに突かれた?では、キツツキ突き病だ!」

「今度は猫にひっかかれた?猫ひっかき病だ!」

どんな病院だ、と思いますね。
しかし、最後のは正しい。

「猫ひっかき病」は存在します。

典型的な症状として、
リンパ節が痛みを持って腫れます。

潜伏期は数日間から数週間。
倦怠感を伴う発熱が続き、
「どうも普通の風邪じゃないっぽいぞ」
ということで受診される方が多いようです。

原因菌はバルトネラという菌。
普段は、猫の血液の中で暮らしています。
1993年に初めて報告された、
比較的新しい動物由来感染症だと言えます。

幸いと言いますか、
この安易な(?)ネーミングのお陰で、
猫を飼っている方の間では
「そこそこの知名度」があります。

ただ、この病気に関して
「あまり知られていないな」
と感じる部分もあります。

それは、感染の成立には
「猫についているノミ」
が重要な役割を果たしている、という点です。

もともと、このバルトネラという菌は
猫に対してほとんど害がありません。

ですから、見たところ健康そうな猫が
保菌している場合もあります。


猫から猫へは、基本的にノミがうつします。

バルトネラに感染した猫がいるとします。
この猫の血を吸ったノミが、
「どれ、もう一軒いくか!」
と別の猫の血を吸う。

このときノミを介して感染が成立します。
大事なことは、うつした猫もうつされた猫も
基本的には無症状だということです。

その猫が保菌していたのか、
そこから別の猫にうつったのか。
外から見ていてもわからない、という事です。

ここまで説明すると、鋭い方はある疑問を抱きます。

「猫ひっかき病って名前、おかしくない?」
と。

つまり、

・バルトネラは猫の血の中で暮らしている
・猫の爪の先に血はほとんど流れていない
・すると猫に引っかかれても菌はうつらない

という理屈が成り立ちそうですが‥。

ところが、そうではありません。
この感染経路には盲点があるのです。

それは、
「ノミが吸った血液の行き先」
をたどることで明らかになるのですが‥‥。

おっと長くなりました。
明日に続きます。

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