南の往診獣医さんのブログ

往診獣医が獣医師ならではの視点で動物のこと、社会の出来事、その他の話題についてオリジナルイラスト付きで書いています。

学校飼育動物を考える (6)

前回からの続きです。

毎年、獣医師会に掛かってくる、
飼育動物担当の先生からの相談。

ところが、その地方公共団体の教育行政担当課は
「現場が問題を抱えて困っている」
という認識そのものがありませんでした。

どういうことなのか?

私も再度、現状を説明します。
教育行政担当課の方も真剣です。
そして、事のあらましがわかって来ました。

これはどうやら、
「情報の伝達経路の問題」
だったようです。

「学校が問題を抱えているのは確かだが、
その情報は行政に届いていない」
そのことが確認できました。

お時間を取っていただいた事を謝して、
市役所を後にします。

その後。
往診の合間を縫って、再び学校を回ります。
複数の学校の飼育担当の先生方、
学校の事務の方々のお話を伺いました。

すると。
真相がわかってきました。

飼育動物担当の先生は、
学校飼育動物の問題に直面したとき
「学校内で」あるいは「個人的に」
問題を解決しようとした
のです。
必要なお金も、ほぼ学校内でまかなおうとされていました。
しかし、もともと学校には学校飼育動物に特化した財源がありません。

そこで「学校」が相談した先は「市町村」ではなく、「県獣医師会」だったのです。

つまり
「〇〇市立の小学校」の抱える問題が、
「〇〇市」に報告されることの無いまま、
「県獣医師会」に寄せられてい
たのです。

そして獣医師会は長年にわたって、
この問題に誠実に対応してきました。
それが役割だと認識していたためです。
そのこと自体は間違いではありません。

飼育動物のために。
子供たちのために。
学校のために。

自分の動物病院を閉めたあと、
学校飼育動物対策委員の獣医師が夜遅くまで会議していることを、誰が知るでしょう。

しかし一方でそのことが逆に、
「情報の遮断」
につながっていた可能性があったのです。
何と皮肉なことか‥‥。

私の足は、再び市役所に向きます。

学校と地方公共団体
この両輪がタイミングよく回らない限り、
獣医師会の後押しは効果を発揮しません。

学校と地方公共団体‥‥。

実は動物愛護の面から言えば、
この二つはしっかりと結びついています。

ひとたび、学校飼育動物の問題が生じたとき。
学校は、決して孤立していません。
市町村、さらには県と、組織的な対策が取れる
のです。

それは、
「飼育担当の先生が孤立しない」
という事をはっきりと意味しています。

そのことを示す証拠があります。

環境大臣の指示を受け、各都道府県が独自に策定することになっているもの。

問題を解決に導く力を秘めながら、
普段ほとんど顧みられる事のない計画書。
その名を

「動物愛護管理推進計画」。

次回、この文書に光を当てましょう。
その反射光が延びる先に、飼育小屋の明るい未来があるかもしれません。

次回に続きます。