南の往診獣医さんのブログ

往診獣医が獣医師ならではの視点で動物のこと、社会の出来事、その他の話題についてオリジナルイラスト付きで書いています。

学校飼育動物を考える (5)

市役所までの道すがら、
ある出来事を思い出します。

「学校に予算がないんです」
そう言った飼育担当の先生は、
自費で治療費を負担しておられました。

「子供達には、命は大切だって‥‥。いつも‥‥」

大変心の優しい先生です。
しかし、先生個人に負担を負わせるのは本来、
あってはならないことです。

この先生に、動物愛護法をご存知か尋ねました。
やはりご存知ありませんでした。

「学校飼育動物の適正飼養」
「学校における動物愛護の普及啓発」

それを行うことが
「先生個人の責任ではなく、地方公共団体や学校の責任」
であることを。

この先生に限らず、多くの飼育担当の先生は
ほぼ何の知識も与えられないまま、
命をあずけられます。
学校飼育動物に関する、
研修や実習を受ける機会はまずありません。
責任感の強い先生ほど、苦しまれます。

そして動物愛護法のことをまた、
多くの校長先生が知らないのです。
そこに意図的な悪意があるわけではありません。
恐らくこの法律について知らなくても、
学校という組織はほぼ機能するからではないでしょうか。

そして沖縄県内の多くの学校では、
「学校飼育動物」単独の予算がありません。
私の知る限り、園芸費や消耗品費などから捻出されていました。
その予算とて、充分であるはずがありません。

多くの学校にとって
動物愛護法は認識されにくい法律であり、
それゆえ飼育担当の先生は命を抱えて孤立する。

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思いを巡らせながら市役所の階段を上ります。
たどり着いたのは、ある地方公共団体の教育行政担当課。

現状について、私の知る所を説明します。
動物愛護法の観点から、何らかの対応が必要かと思われますが」
担当の方にそうお話ししました。

ところが、返ってきたのは意外な答えでした。

「学校の現場からは、学校飼育動物の予算に関する要求は来ていません。
必要性のないものに対して予算をつけるというのは‥‥」

要求が無い‥‥。
必要性がない‥‥。
しかし実際、獣医師会には毎年のように相談が‥‥。
これは一体、どういう事なのでしょうか。

次回に続きます。