南の往診獣医さんのブログ

往診獣医が獣医師ならではの視点で動物のこと、社会の出来事、その他の話題についてオリジナルイラスト付きで書いています。

ウジ対策 治療編

今回は「ウジを見つけたあとどうすればいいか」という点について述べます。

まず言っておかねばならないのは、絶対条件として「獣医師の診察を受けること」です。

ウジは体内深くに侵入しますし、肛門から入ったものは腸管を食い荒らします。
外科的にウジを取り除くだけでなく、適切な内科療法が必要です。

ですからここで述べる対策は

○発見してから獣医師の診察を受けるまでの間
○自宅療養中

にご家庭ですべき事が中心になります。
ご了承下さい。

1.毛刈りをする
予防編でもお話しましたが、毛があるとウジの出所が不明瞭です。
毛玉も含めて、邪魔な毛は刈りましょう。
毛を刈れば、毛の間を縫うようにして移動しているウジも見つけやすくなります。
特にお尻周りの毛を刈っておけば、毛を伝って肛門に向かうウジを発見しやすくなります。


2.床材を変える
これは特に視力に自信のない高齢の方におススメです。

ウジの湧いてしまった犬は横になっている時間が長いですから、床には工夫が必要なのです。

◆柔らかい素材
◆洗いやすい素材
◆色は黒系のもの

を意識してマットを選びましょう。
柔らかい理由は床ずれを防ぐため。
マットはすぐに汚れるので洗いやすいに越したことはありませんし、色が黒ければウジを発見しやすくなります。


3.ウジをこまめに取り除く
一度、体外に出たウジは再び傷口や肛門に入りたがります。こまめに取り除いてやりましょう。特別な器具は必要ありませんが、ピンセットや毛抜きがあるとよいです。
裏技的な技術になりますが、傷穴に軟膏を塗りこむという方法もあります。
私は一般的な抗生剤入りの軟膏を使用します。

これを傷穴に塗り込む(軟膏で穴をふさぐようにする)と、居心地が悪くなったウジが我先にどんどん外へ出てきます。そこをつまみあげて取り除くのです。
体の深くに入り込んだウジを外へ誘導するには非常に有効な方法ですが、あくまでも獣医師と相談の上でおこなって下さい。


4.傷口を清潔にたもつ
ウジを取り除き、傷口からの感染を防げば、ウジの開けた穴は自然治癒していきます。
実際の例を挙げてみましょう。


(治療初日: 傷は深く、傷穴の中にもウジが見られる【白黒に画像加工】)



(治療6日目: 皮下組織の再生が見られる。周辺にウジは見られない)



(治療12日目:傷口が表皮に覆われつつある)


このように、適切な治療を行えば10日程度で傷はふさがります。
ただし傷口を清潔に保たねばなりません。
動物病院から内服薬や外科用軟膏が出ていれば、正しく使用すること。
たまに「傷口の消毒だ」とアルコールを掛けたりする方がいますが、再生しようとしている細胞まで死ぬため逆効果です。
水や生理食塩水で汚れを取り除き、自然治癒を促すとともに、表皮の汚染によるハエの飛来を防ぎましょう。


5.周辺環境の清掃
周辺環境が汚れていると新手のハエがやって来ます。動物の身体がすでにウジに襲われている状態で、第二波、第三波の攻撃を受けることになります。
「いつ食欲が出てくるかわからないので、エサは出しっぱなしにしてある」という飼い主さんもいました。
しかし、その上をハエが旋回しているようでは本末転倒です。
動物のまわりも清潔に。





‥‥というわけで
「ウジを見つけたとき自宅でできること」
についてまとめました。
しかし、まずは早期に獣医師の診察を受けること
そして何より「ウジにたかられないよう予防すること」です。
予防は最高の治療。

心掛けましょう。





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