オモテか、ウラか。
今日は久しぶりに犬のお話を。
ちょっとした推理にお付き合い下さい。
まず、この写真。
ラブラドール・レトリバーの前足です。
ううむ、普通の状態ではないですね。
手の甲の毛が抜けて肌も荒れています。
地面とこすれ合ったような跡もあります。
よく診てみると、反対側の手も同じような状態でした。
どうしてこうなった?
というのが問題ですが、もちろん犬は答えてくれません。
皆さんなら、どう推理するでしょうか。
歩くとき、手の甲を引きずるのでしょうか。
確かに神経に問題がある場合、肢端がナックリングして手の甲を引きずることがあります。
ところがこの子の動きは機敏で、上手に走ることもできます。
さて、どうするか‥‥。
こんな場合、往診ならではのアプローチが威力を発揮します。
と言っても大げさな事ではありません。
「現場に留まり、まずはひたすらその動物の振る舞いを観察する」
ということです。
この子としばらく一緒にいると、やはり。
重要な場面を目撃することになります。
これです。
片方の手を曲げて、手のひらを上にしています。
どうしてこんな姿勢をとるのでしょう?
実はその後、この子は手のひらを舐めはじめました。
つまり、指の間がかゆくて手のひらを舐めているのです。
このとき、手の甲が地面とこすれあって、擦過傷ができるというわけです。
すると病変の本丸は手の甲ではなくて手のひら側、ということになります。
往診車には顕微鏡も血液検査機器も超音波の機械も積んであります。
彼らはもちろん心強い相棒ですが、それらに頼る前に「観察すること」はとても大事です。
動物は確かに、自分の病気について語りません。
しかしヒントをくれることがあります。
それを見逃さないことが大切です。
それは、獣医でなくてもできることです。
現場の状況に一番詳しいのは飼い主さんですから、よ〜く観察する時間を取ってみましょう。
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