南の往診獣医さんのブログ

往診獣医が獣医師ならではの視点で動物のこと、社会の出来事、その他の話題についてオリジナルイラスト付きで書いています。

犬のコロナウイルス感染症

 

今日はいま世間を騒がせている「ヒトのコロナウイルスではなく、「犬のコロナウイルスのお話をします。

 

「犬にもコロナウイルス感染症がある」と言うと飼い主さんはたいてい驚かれます。

しかし、混合ワクチンをよく見てみると‥‥。

 

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確かに「犬コロナウイルス感染症と書いてあります。

注)ただし、混合ワクチンの種類によっては含まれないものもあります。

 

コロナウイルスは、ざっくり言ってしまえば犬に腸炎を引き起こすウイルス。

 

1971年ドイツに突然現れたこのウイルスは、しばしば子犬を死に追いやる感染症として報告されました。

その後ヨーロッパ、全世界へと拡大し日本にも到達したわけです。

 

この犬コロナウイルス、感染犬の糞便に混じって排泄されて経口感染で犬から犬へ感染しますが、ヒトにはうつりません。

 

犬が感染すると幼若期の犬を中心に下痢や嘔吐が見られます。

ただ、単独感染での死亡率は高くありません。

ですから単一の病気として、それほど危険視されない感染症ではあります。

 

ただ、厄介なのが「犬パルボウイルス」との混合感染です。

犬パルボウイルスは犬に致死的な腸炎を引き起こすウイルス。

 

犬パルボウイルスの単独感染だけで十分危ないのに、そこに犬コロナウイルスも混合感染すると非常に危険です。

 

 

また、コロナウイルスは軽症の感染犬からも持続的に排出されます。

すると多頭飼育をしている場合、「症状が軽いがゆえに」蔓延する危険があります。

 

そういう意味では、犬コロナウイルス感染症もまた、注意すべき病気だと言えるでしょう。

 

ちなみにこの犬コロナウイルス、なぜ50年前のドイツに突然現れたのか。

「もともとは豚のコロナウイルスだったものが変異した」という説があります。

 

家畜で蔓延したウイルスが変異し、種を越えて蔓延していく場合があります。

 

犬にしろ家畜にしろ、多頭飼育の弊害と言えばそうなのですが‥‥、地球という空間で最も多頭飼育されている動物が人間である以上、ウイルスとの戦いは避けられないとも言えるでしょう。

 

 

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