君の名は
猫ならミー、うさぎならミミ。
こういった「ありそうな」名前が出てくると、カルテにつけるとき聞き返すという事がありません。
しかし、たまに驚く事もあります。
「こっちの子の名前は…?」
「ネコノスケです」
「そしてそちらの子は‥‥」
「ぜんざいまるです」
「ぜんざいまる?」
何やら、そういうキャラクターがいるのだそうですね。
また、ある猫の時は。
「ハナコといいます」
「‥‥ん?ハナコ?」
「はい、ハナコ」
「しかし‥‥。ハナコ、ですか‥‥」
「変ですか」
「大変申し上げにくいのですが」
「何です?」
「この子はオスです‥‥」
子猫の場合、オスとメスを間違える事があります。睾丸がまだ小さく、おもてに出て来ていないのでメスだと思われるわけですね。
またある時は。
「シロ?黒い犬なのに?」
「それがね、シロって呼んじゃうもんだから」
「あなたが?」
「そう。代々、白い犬を飼ってましてね。犬と言えばシロで。初めて黒い子が来ましてね」
「クロにしなかったんですか」
「最初だけ。でもついシロって呼んじゃうでしょ、この子もそれで覚えたもんだから」
なるほど‥‥市町村に出す狂犬病予防注射の備考欄に書いておかないといけません。
『名前がシロで毛色は黒であるが、特殊な事情によるものであり誤記ではない』、と。
こんな話も聞いています。
ある保護施設で飼われていた猫が、新しい家庭にもらわれて行きました。
新しい名前で呼ばれる生活が始まりました。
ずいぶん時が経って、保護施設の方が久しぶりに面会に行きました。
つい、昔の名前で呼んでしまいます。
するとちゃんと、返事をしながら駆け寄ってきたそうです。
「 どちらの名前も自分のことを表している」
この認識は、かなり高度な知能がないと不可能です。
そもそも、
「自分には名前があって、これで他の存在と区別されている」
という認識ができるだけでも大したものです。
ちなみに冒頭の「ぜんざいまる」、ちょっと前に脱走しました。
数日後に発見されましたが、ご家族は毎日ご近所を捜索しました。
「ぜんざいまる~!」
「ぜんざいまる~!」
「ぜんざい~……!」
道行く人は、何だ何だ?だったことでしょう。
戻ってきてよかったですね。