南の往診獣医さんのブログ

往診獣医が獣医師ならではの視点で動物のこと、社会の出来事、その他の話題についてオリジナルイラスト付きで書いています。

SFTSとは何か (3)

SFTSも3回目です。

今までのところをおさらいすると、

 

▶︎SFTS重症 熱性 血小板減少 症候群

病原体はSFTSウイルス

マダニからの感染、あるいは犬・猫など感染動物からの感染が判明している

致死率は約16%である

 

今日は症状などについて書いておきます。

その前にまず、よくある昔話をひとつ。

 

昔々、甚兵衛どん、という木こりがおったと。

ある日、城の殿様から御触れがあってな。

「大太鼓を作るゆえ、胴回り太きヒノキを持って参れ。一番太き幹を持ち来たる者には、必ず褒美を取らすであろうぞ」

甚兵衛どんはな、あちらの山こちらの山、さんざ駆け回って、言うたそうな。

「このあたりの山さ、太いヒノキはみな切ってしもうただ。おら、西の大山さ、入ろうと思うだ」

それを聞いて、みなおったまげたそうな。

「西の大山さ、山神さまがいなさるだ。入っちゃなんねえ。木を切るなんぞ、もってのほかだべ」

それでも甚兵衛どんは諫めを聞かんでな。ひとり西の大山へ入ったそうな。

たたりを恐れて人の入らねえ山のこと、クマザザも藪も生い茂り、それをかきわけかきわけ、甚兵衛どんは見事な一本ヒノキまでたどり着いたそうな。

それはそれは大きな木でな、甚兵衛どん、虫に刺されるのもかまわず一心不乱に切り倒して、揚々と里へ降りてきたそうな。

城の殿様は大喜び、甚兵衛どんはたいそうな褒美をもらったそうな。

「山神さまのたたりなどと、みな臆病じゃ。見よ、わしは何ともないわい」

それから10日ほどたったかのう。

甚兵衛どんは、死んでしもうた。

前の日までは元気じゃったが、突然高い熱を出してな。

腹が痛い、頭が痛い、体が痛いと言うてのう。

薬も医者も役立たずじゃ。

さいごは言葉もしゃべれんようになってな、程なく死んでしもうたのじゃ。

ええか、皆の衆。西の大山には入っちゃなんねえ。

山神さまが、いらっしゃるでのう‥‥。

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SFTSは、昔から我が国に存在していたと考えられます。

SFTSウイルスが世界で初めて確認されたのは2011年、中国でのことでした。

2013年に日本での発生がみられた当初、

中国から入って来た可能性も示唆されました。

しかし日本と中国ではウイルスの遺伝子に違いがみられたため、

もともと日本に存在していたことがわかったわけです。

 

山に入るとたたりがうんぬん、

という昔話は日本中にあります。

そしてたいていの場合、禁を破った者には

「ほら、何ともなかった」

と吹聴する猶予期間が与えられます。

そして、その後の発症。

 

SFTSだけでなく、動物由来感染症の中には

潜伏期が長いものがあります。

日ごろから知識を得ておくことが大事ですね。

 

というわけで今日は

 

SFTSの潜伏期間は10日程度

 

おもな症状は

・発熱、消化器症状

・腹痛、頭痛、筋肉痛

意識障害失語症

 

ということを押さえておきましょう。

ただし甚兵衛どんのように、

これらの症状が全て見られるわけではありません。

おかしいと思ったらすぐ医療機関を受診し、

衰弱した動物との接触の有無について述べましょう。

 

そして、強調しておきますが

 

すべての動物が危険だ、

というわけではありません。

 

それは、たくさんのペットが家族として飼育されている現代社会を見れば、自明のことです。

しかし、

「衰弱した動物」

接触するさいには、

感染症対策に注意を払いましょう。

 

次回、まとめに入ろうと思います。

 

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