南の往診獣医さんのブログ

往診獣医が獣医師ならではの視点で動物のこと、社会の出来事、その他の話題についてオリジナルイラスト付きで書いています。

SFTSとは何か (4)

SFTSについての4回めです。

 

今回は、

SFTSと動物愛護ボランティアの関わりについて」

述べたいと思います。

例によって、前回までのまとめです。

 

▶︎SFTS重症 熱性 血小板減少 症候群

▶病原体はSFTSウイルス

マダニからの感染、あるいは犬・猫など感染動物からの直接感染

致死率は約16%である

潜伏期間は10日程度

症状は発熱、消化器症状、頭痛、筋肉痛、意識障害

 

さて、SFTSは2013年に

第四類感染症に指定されました。

補足すると感染症法では、感染症

「危険性が高い順に第一類〜第五類まで」

分類します。

 

「なぁんだ、第四類なら四番めか。大したことないな」

と思わないで下さい。

同じ第四類に分類される感染症には、

狂犬病炭疽日本脳炎など、

ぞっとするような面々が並びます。

 

そして、ここで重要なのは

「第四類感染症に指定された2013年には、動物から人への直接感染が確認されていなかった」

ということです。

この時点では、SFTSはあくまでも

「マダニが媒介するウイルス性疾患」でした。

 

f:id:oushinjuui:20190106024005j:image

 

2017年:猫から人への直接感染と思われる事例で国内初の死者

同年:犬から人への直接感染

2018年:手袋・マスク着用にも関わらず、猫から獣医療従事者への直接感染

 

つまり、

感染症法で狂犬病炭疽と同じカテゴリーの第四類に指定された感染症が、より直接的な感染経路を持つこと」

「直接感染により死亡するケースもあるということ」

がわかったわけです。

そしてその感染能力は予想より高く、

手袋・マスクで防除できない可能性すら出てきました。

 

さて今、殺処分ゼロを実現すべく多くの犬や猫が保護されています。

次のような状態の猫を、ボランティアさんなら容易に想像できるでしょう。

 

・黄色い鼻水を飛ばしながらクシャミする

・目やにが固着して目が開かない

口内炎がひどく、悪臭のするヨダレを垂らす

 

こういった猫を

「日常的に保護し、治療し、譲渡できるまでに回復させる」

ということがボランティアさんにとって

いかに大きなリスクを伴うことか。

ボランティアさんは基本的に一般市民です。

感染症に関する知識、防除手段を持たずに活動せざるを得ない方が多くいらっしゃいます。

 

SFTSという感染症があること

感染症法第四類に指定されていること

・動物からの直接感染が起こりうること

・亡くなられた方もいるということ

 

恐らく、ほとんどの方がご存知ないのではと思います。

 

この感染症がクローズアップされることにより

猫の遺棄や虐待が起こるのではないか、

という危惧は私にもあります。

「あまり大声で注意喚起するのもどうか」

という意見もあるでしょう。

 

しかし情報を遮断することで尊い人命を

危険にさらすよりは、

正確な知識を提供する事の方が重要であると考えます。

正確な知識を持つ者の行動が風評を圧倒する、これが健全なあり方だと思います。

 

ボランティアの皆さん、SFTSに関する報道・情報等には細心の注意を払って下さい。

 

次回まとめの最後として、このSFTS

「動物愛護行政に大きな変化をもたらす可能性がある」

という点について述べたいと思います。

 

f:id:oushinjuui:20181216005317j:image