南の往診獣医さんのブログ

往診獣医が獣医師ならではの視点で動物のこと、社会の出来事、その他の話題についてオリジナルイラスト付きで書いています。

フィラリア症と腹水 (1)

冬といえば、蚊の飛ばない季節ですが‥、ここ沖縄は違います。私も今日だいぶ刺されました。

 

‥‥というわけで、沖縄ではフィラリアの予防薬を一年中飲ませないといけません。

また、最近は注射薬も出ていますので、年一回の注射で予防する方法もあります。

 

しかし、往診していると多くのフィラリア感染犬を見ます。予防薬を飲んでいないケースも多いですね。

また、何かのアクシデントで投与できない期間があり、運悪くこの期間に感染してしまったという場合もあります。

 

ただ、注意すべきなのは「感染した」という表現には幅があるということです。

 

つまり、

「どのくらいの数のフィラリアが寄生しているのか」

程度によって症状が変わってくるということです。

 

例えば台所の水切りを思い浮かべてください。野菜くずや米粒で目詰まりを起こしていれば、水は流れにくくなります。

それがどれくらい詰まっているかで、流れ方は変わりますね。

 

フィラリアと心臓の関係も、これと同じことが言えます。寄生しているフィラリアが何匹いるかによって、血流は変わります。

当然、心臓への負担も変わってきます。

 

ですから、「感染した」からといってそこで予防薬の投与を中断してはいけません。

「さらなる感染」を防ぐことは大きな意味を持ちます。

また、最近は感染犬への内科的アプローチの方法も多様化してきました。

心臓そのものに働きかける薬もありますし、利尿薬もより効果のあるものが出てきました。

投薬により心臓に寄生したフィラリアの寿命を縮める方法も見出されています。

 

この写真をみて下さい。

フィラリア陽性のこの子は、相当な腹水の量です。呼吸も非常につらそうで、独特の咳をしていました。

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そしてこれが、投薬治療を始めて1ヶ月後の写真です。

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痩せてはいますが、腹水の貯留はありません。40分ほど観察しましたが、咳はしませんでした。

 

この投薬期間中、腹水は一度も抜きませんでした。内科的治療が非常にうまくいった例です。

 

相手が生き物ですから常にこううまくいく訳ではありませんが、獣医学は確実に進歩しています。

フィラリアに感染して、腹水もたまり咳も出ているから、もうダメだ」

と思う前に、獣医さんに相談してみて下さい。

 

ちなみにこの写真の子は、腹水が引いて喜び、庭を駆け回って足を怪我してしまいました。動物の治療というのは、本当に難しいものです。

 

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