南の往診獣医さんのブログ

往診獣医が獣医師ならではの視点で動物のこと、社会の出来事、その他の話題についてオリジナルイラスト付きで書いています。

年末、クスリのリスク

年末、周りの動物病院さんがぼちぼちお正月休みに入り始めます。
私も12/31からはお休みをいただきますが、この時期、こんなお電話が来ます。

「かかりつけが閉まっていまして。いつも処方してもらってる薬がもうありません。そちらで出していただけますか」

それはお困りでしょう、薬なしで年を越すのは不安でしょうから‥‥。

「それで、何というお薬ですか?」
「あの、名前はわからないんです」
「どのような剤型ですか?」
「白くて、丸い錠剤」
「たいてい、薬はそうですがな」

それでも、症状や飲ませる回数、価格帯などから何とか判明させて処方できることもあります。
しかし、こんなパターンもあります。

「心臓の粉薬はありますか?」
「心臓の?普通、錠剤で出ますけどね‥‥」
「粉にしてもらってたんですよ、うちの子は錠剤が飲めないので」
「う〜ん、何という錠剤を粉末にしてもらってました?」
「わかりません、いつも粉薬でもらってたので。何種類か、まとめて粉にしてもらってました」

この場合、複数の薬剤が粉末状に混ざっているわけです。
実際、現物を見てもよくわかりません。
何種類あるやら。
用量はどうやら。
推測は不可能、ましてや心臓の薬となると、
「たぶん、こんな感じかな」
とこちらで安易に調合するわけにもいきません。

動物病院さんによっては薬剤名や用量をきちんと示して処方します。
しかしお薬を切らしてしまわれる飼い主さんは、大抵その紙も紛失しておられます。

ただでさえ連日、日付が変わるまで診療の続くこの時期。
電話対応に多くの時間を割けないことがあります。

動物のことを考えれば、お薬を出したいのは当然です。
しかし命をお預かりする以上、処方する獣医師には大きな責任が伴います。
短時間で正確な再現性の求められる「お薬クイズ」は非常にリスキーで難易度の高いものです。
そこで飼い主さんは、以下の点に気をつけて下さい。


・かかりつけの長期休診日をチェックしておく
・処方されている薬の名前を普段から把握しておく
・薬のアルミシートなど、手がかりとなる付属物があれば残しておく
・支払明細、薬袋など薬剤名が書かれた物は取っておく
・お薬の説明書をもらった場合は、絶対に無くさない

ということで、皆さま良い年末年始をお迎え下さいますよう‥‥。