南の往診獣医さんのブログ

往診獣医が獣医師ならではの視点で動物のこと、社会の出来事、その他の話題についてオリジナルイラスト付きで書いています。

アトピーやアレルギーに効く薬

「アポキル」というお薬があります。

犬のアトピー性皮膚炎や、
アレルギー性皮膚炎で承認の取れた薬剤です。

獣医領域ではまだまだ新しいお薬だと言えます。
使用成績は非常に良いです。
ただ非常に高価な薬ですので、
処方をためらうこともあります。

とは言え、往診先に
「こりゃあ、アポキルの出番だな」
と判断せざるを得ない状態の犬がいれば、
薬箱に手が伸びるというものです。

ということで、この子に処方しましょう。
見ているだけで痒くなるような、
全身性のアレルギー性皮膚炎です。
もちろん本人も相当痒がっています。


すごい赤みですね。
ちなみにこの子はどうやら
食物アレルギー性皮膚炎のようで、
何をあげても直後に皮膚が赤くなるとのこと。

頼むぞ、アポキル。
長年の苦しみから解放してあげてくれ‥‥。

ということで一週間後。

いいですね。
赤みがほとんど取れています。
全く痒がらないそうです。
副作用らしいものも感じない、とのことです。

さすがに一週間では毛が生えてきませんが、
近づくとうっすら、うぶ毛は見えていました。


アポキルは商品名で、中身は
オクラシチニブという物質です。
「痒みを伝える神経」の働きを阻害します。

つまり、すごく単純な言い方をすれば
「痒くなくなる」ということです。

アレルギー性皮膚炎やアトピー性皮膚炎では、
「かけばかくほど痒くなる」
という負の連鎖が起こりやすいのですが、
アポキルはこの連鎖を断ち切ります。
実に効果的です。

比較的起こりやすい副作用としては
「眠気」がありますが、
これを副作用と捉えるかは微妙なところです。

人間なら
「痒みは止まったが、眠くて仕事にならない」
という困ったことになるわけですが
犬の場合は仕事の心配が無い上に、
寝ている間は身体をかかないので
そのぶん回復は早まるわけで‥‥。


アポキルは大変優秀なお薬です。
しかしあらゆる皮膚炎に使用できる訳ではありません。

細菌性皮膚炎なら抗生剤、
疥癬なら抗疥癬薬、
カビが原因なら抗真菌薬と、
正確な診断と適切な薬剤の使用が求められます。
必ず獣医師の診断が必要になってきます。

また、アポキルが効くことがわかっても
「そもそもの原因は何か」
ということを調べるのがスジです。

原因となるアレルゲンさえわかれば、
お薬を飲む必要もないわけですから。

ということで今日はお薬の話をしてみました。
薬というのは、本当にすごいものですね。