南の往診獣医さんのブログ

往診獣医が獣医師ならではの視点で動物のこと、社会の出来事、その他の話題についてオリジナルイラスト付きで書いています。

「四角い」皮膚炎

先日、このブログで
「皮膚病で幾何学的に整った病変はまれである」
と書きました。

「ありえない」
と書かなかったところがミソです。

もしそう書いたら、知り合いの獣医さんから
「あなた県に勤めてた頃、さんざん診断したでしょ」
とツッコミが入ります。

そうです。
幾何学的な病変を形成する感染症はあります。
しかも「何となくそう見える」というような
レベルのものではありません。

それはもう人工的と言っていいレベルの‥‥。

ということで論より証拠、
下の画像をご覧ください。


(https://www.tavaresanimalhospital.com)

実に見事な四角形です。
菱形疹(りょうけいしん)、と言います。
決して焼きごてを当てたわけではありません。
湿布を貼ったわけでもありません。

これは、
「豚丹毒(とんたんどく)」
といわれる細菌感染症

豚だけでなく、哺乳類や鳥類にも感染します。
人にも感染しますが、人の場合は
「類丹毒(るいたんどく)」
と呼ばれます。

動物から人にうつるわけですから、
動物由来感染症の一つということになります。

原因菌は
Erysipelothrix rhusiopathiae
という舌を噛みそうな名前の細菌です。


(https://alchetron.com)

皮膚病変を形成したり、
関節炎を起こしたり敗血症を起こしたりと
なかなか派手にやってくれる菌ですが、
ペニシリン等の抗生剤が効いてくれます。

ちなみに豚は一頭一頭、獣医師の検査を受けるので、
豚丹毒と診断された豚は食肉になりません。
こんな所でも獣医師が陰ながら頑張っています。

それにしても不思議です。
なにゆえ、
ここまで直線的な病変が形成されるのか。
菌が隊列を組んでいる訳でもないでしょうし‥‥。

豚丹毒、実に不思議な病気です。