心臓の、ホネ?
「心臓に骨がある」と言うと一般の方は驚くことでしょう。
しかし獣医領域では、珍しいことではありません。
ある種の動物では心臓に骨があります。
これを「心骨(しんこつ)」と言います。
心骨は意外に皆さんのなじみ深い動物で見られるのですが‥‥。
‥‥ということで、今日はちょっと獣医師国家試験っぽくいってみますか。
問題 「心骨を有する動物を以下の中から選べ」
1. ウサギ
2. ネコ
3. ウシ
4. サル
5. ラット
正解は‥‥‥
3. ウシ
です。
牛では大動脈の線維輪という場所にくっつく形で二個の「心骨」が存在します。
私もこれは実際に経験したことですが、牛の心臓の内部の異常を(牛の死後に)検査すると非常によくわかります。
ちなみに心臓の内部まで調べる理由の一つには、心臓の内部にイボのような菌の塊が形成されることがあるからです。
これを検査するためには心臓を切らねばなりません。しかし、どこでも適当に切ればいいというものではありません。
刃物を入れる場所、角度、深さに気をつけながら、なるべく心臓の原型をとどめるように切り開かねばなりません。
しかし、まだ不慣れな獣医さんは(私も昔、そうでしたが)、カチーンと刃物が当たって動かなくなる箇所があります。
それはだいたい半月弁という場所の辺りなのですが、心骨はそこに位置します。
熟練したベテランだと上手にそこをよけて、心室や心房や各弁が見えるように、かつ最も原型をとどめた形で手早く切り開きます。
ともかく、牛の心臓には骨があります。
ついでに言えば、豚や馬の心臓には軟骨が見られることがあります。これは「心軟骨(しんなんこつ)」と言います。
場所は基本的に牛の心骨と同じですが、こちらは軟骨。ただし、老齢になってくると骨化して心骨と同じようになります。
よくある言い回しで
「大した心臓の持ち主だ」
「なかなか骨のあるやつだ」
というのがありますが、これを組み合わせて
「あいつは心臓に骨のあるやつだ」
と最大級の賛辞を送った場合、要するに
「あいつは牛だ」
と言ったことになります。
注意しましょう。