南の往診獣医さんのブログ

往診獣医が獣医師ならではの視点で動物のこと、社会の出来事、その他の話題についてオリジナルイラスト付きで書いています。

猫と数学的帰納法

タイトルで諦めた方も多いかと思いますが‥‥。

とりあえず、書き始めてみます。

数学的帰納法
という証明方法があります。
わかりやすく言えば、

・一番はじめのドミノが倒れることを示す
・次に「どのドミノでも倒れる」と仮定する
・「そのときは隣のドミノも倒れる」ことを示す

こうすれば、
「一番手前のドミノが倒れる」
これを示してしまえば、
「どのドミノも手前が倒れれば倒れる」
ということが示されているので、
二番目のドミノも倒れることになります。

それによって
「二番目のドミノが倒れる」
ことが証明されたことになり、同じ理屈で
三番目のドミノも倒れることになります。

それによって
「三番目のドミノが倒れる」
ことが証明され‥‥‥、

結局、その数式はどこまで行っても成立するのだ、
ということが証明されます。

さて。
何の話でしたか。

そう、猫です。
10匹、20匹と猫を抱えて、
多頭飼育崩壊に追い込まれる家の成り立ちは
数学的帰納法の原理に非常によく似ています。

初めはたいてい1匹です。
次に、何かの事情で2匹になります。

「散歩に連れて行くわけでもないし、猫2匹くらい何ともない」

やがて3匹になりました。

「2匹も3匹も同じようなものだ」

4匹になります。

「3匹も4匹も変わらない。にぎやかでいい」

5匹になりました。

「ここまできたら、もう同じようなものだ」

6匹、7匹‥‥。

往診先で何軒もこのようなお宅を見てきました。
共通する事があります。
本人が拾ってくる、という事に加えて

「そこに猫が捨てられていく」

ということです。

「全部私が拾ってきたんじゃない、うちの前に捨てられてたのもいるんだ」
「育てるしかないじゃないか、悪いのは捨てた人だ」

このパターンはよく見られます。

この場合、
「あの家では猫をたくさん飼っている」
ということが近隣の方に知れています。
なぜ知れているかと言うと、
完全室内飼いではなかったり、
異臭や鳴き声が外に漏れ出たりしているからです。

もちろん動物を遺棄すること自体が犯罪ですから、
捨てる側を正当化することはできません。

ただ、
「あの猫屋敷で放し飼いにしている猫がうちの庭で子供を産んだ。だから返しに来たんだ。それとも何か、俺に、役場に連れて行って殺処分させろってのか」
と言われたらどう言葉を返しましょう。

ともかく
「家の周りを猫が常にウロウロしている」
「玄関や開いた窓から猫が行き来している」
といった状況では、

・猫が繁殖する環境を設定することになる
・新たな遺棄を招来する

という問題が起こります。
それこそ10匹が11匹に増えても把握できません。

「早めに避妊去勢して、室内で飼育する」

とにかくこの基本を守り、
倒れるドミノの連鎖を断たないといけません。