南の往診獣医さんのブログ

往診獣医が獣医師ならではの視点で動物のこと、社会の出来事、その他の話題についてオリジナルイラスト付きで書いています。

猫と魚の大事な話

飼い主さんから
「猫に刺身をあげてもいいでしょうか」
というご質問をいただきました。

今日はこの点について解説します。
まず、下の缶詰を見て下さい。


(楽天市場)

まぐろだけ、と書いてあります。
あ、いや。よく見ると、
「入っているのは新鮮なまぐろとビタミンEだけ」
と書いてあります。
成分表にも確かに表示されています。

ビタミンEさえ添加しなければ、
正真正銘の「まぐろだけ」だったのに
なぜ加えたのでしょうか。

実はこの疑問が解ければ
「猫と魚の関係」
もすっきりと理解できます。

そこでまず、次のことを押さえておきましょう。


魚類は「不飽和脂肪酸」を多く含む

詳しく見ていきましょう。
不飽和脂肪酸は、「常温で固まりにくい」
という性質を持っています。
「この魚はアブラがのっている」
という表現がありますが、
そのアブラは不飽和脂肪酸
常温で固まって白くなったりしないので、
油の多い少ないは見てもわかりづらいものです。

一方、肉のアブラは「飽和脂肪酸」が主体で、
常温で固まります。
ラード、牛脂などがそうですね。
こちらは脂の量が目で見てわかります。

さて、そこで次のポイント。


猫は「不飽和脂肪酸」を多く摂取すると病気になる

不飽和脂肪酸は、適量の摂取なら
中性脂肪コレステロールを下げる働きがあります。
しかし過剰摂取した場合、猫は
黄色脂肪症
という病気になってしまいます。
(この病気については次回解説します)

ともかく
「猫に不飽和脂肪酸の多い魚を大量にあげてはいけない」
ということが言えます。
特に刺身の場合、焼いたり煮たりした時のように
油が落ちることがありませんから、
よりリスクは高いでしょう。


ではどんな魚が特にダメなのか。
主に青魚が危険です。

アジ、イワシ、サバ。
このあたりは不飽和脂肪酸が豊富です。

そして、カツオにマグロ。
「青魚なの?」という声多数ですが、
彼らは立派なサバ科です。

してみると、
「マグロの缶詰は大丈夫なのか」
という話になってきます。

そこで冒頭の「ビタミンE」の登場です。

ビタミンEには抗酸化作用があり、
不飽和脂肪酸の酸化を抑制してくれます。
黄色脂肪症」は不飽和脂肪酸の酸化によって引き起こされるので、
ビタミンEが添加されていれば、
猫は安心してマグロの缶詰を食べられます。

しかし、
「主食がマグロの刺身である」
という猫は、栄養学的にかなり問題があります。
アジ、サバなどの多給も同様に問題です。
また、青魚でなくても魚類は不飽和脂肪酸が豊富です。
猫に刺身ばかり与えていては、
健康上の問題を生じさせるでしょう。

そもそも、よく考えれば
猫はもともと水辺の生き物ではありません。
魚を食べられるよう進化してきた動物ではないのです。

アシカやトドが魚を食べるのは自然ですが、
「本来、自分の力で捕まえることができないもの」
を主食にすることは生物学的に不自然ではあります。

「このお刺身、アブラがのってうまそうだなぁ」
という顔の猫には、大変申し訳ありませんが
不飽和脂肪酸のお話をしてあげて下さい。


チャオ ちゅーるグルメ まぐろ 海鮮バラエティ 3種類の味入り(14g^120本入)(14g*120本入)【rank_review】【HOF14】【チャオシリーズ(CIAO)】