南の往診獣医さんのブログ

往診獣医が獣医師ならではの視点で動物のこと、社会の出来事、その他の話題についてオリジナルイラスト付きで書いています。

「番犬」というもの

「世代間でペットに対する認識が違う」

と感じることがあります。

 

もちろん年齢を問わず、しっかりした考え方をお持ちの方はいらっしゃいます。

実際、いくつかのボランティア団体の中核を担っているのは年齢層が上の方々ですし、

孫のように動物を可愛がる方々もたくさん存じ上げています。

 

ただやはり、ここ沖縄に関して言えば

フィラリア予防薬が登場する前の世代」

の方々は、

「犬は生まれて数年で腹が膨れて死ぬ」

という考えをお持ちの割合が高い印象を受けます。

 

また、例えば、

「番犬がほしい」

という言葉は、若い人からはあまり出ません。

私も何度かその相談を受けたことがありますが、

電話の主はみな高齢の方でした。

 

「番犬」という概念はいま、

社会的に受け入れられない時代になっています。

 

「怪しい人がいたら吠えてくれ」

「不審者が立ち入ったら、咬みついてもいいぞ」

 

飼い犬をそのようにしつけて、

威嚇行為や攻撃を奨励するような飼い方が

「犬を適正に飼育している」

とは認められないからです。

 

これは極論を言えば犬を危険にさらし、

「命を捨ててでも俺を守ってくれ」

という生き方を強いることです。

ですから、

「番犬がほしい」

と声高に求めるような時代はもう終わっている、

と考えた方がよいでしょう。

 

ただ、これをもって

「お年寄りは、飼い方を知らない」

と短絡的に解釈するのは誤りだと思います。

 

往診で郊外を回っていると、

色々と考えさせられる事があるからです。

 

沖縄の田舎の方ではよく、

お年寄りが一人で暮らしています。

とは言っても、車で30分くらいの所に息子さんや娘さんのうちがあって、交代で親御さんの様子を見に来ます。

 

かわいらしい「番犬」はたいてい、そういうところにいます。

高齢者と犬一匹、静かに暮らしています。

別に、猛犬というわけではありません。

たいてい小さな雑種で、気のいい犬です。

私が行っても「お客さんだ!」と大喜びで迎えてくれます。

 

犬本人も、番犬だという意識はないでしょうし

飼い主さんもその子を命の危険にさらす事を求めてはいません。

 

この写真を見てください。

私の往診範囲の風景です。

海も空も美しいですが人家も少なく、

昼間であっても表を人が歩いていません。

 

f:id:oushinjuui:20190408011626j:image

 

夜になるとこんどは本当に真っ暗です。

誰かそばにいるのといないのでは、

心の落ち着きが違います。

この場合、飼い主さんはこの犬を完全に家族として認識しています。

前後左右どこから見ても番犬でござい、という犬はそこに存在していないのです。

そりゃ不審者が侵入すればいっぱしに吠えるでしょうが、それは習性ですから仕方ありません。

 

ですから、高齢の方が

「番犬がほしい」

とおっしゃる時には、よく事情を伺わないといけません。

よくよくお話を聞くと、犬を危険にさらすような飼い方ではないケースがあります。

 

ただ言葉のチョイスが前時代的だっただけで、

「誰かといつも一緒に暮らしたい」

というニュアンスだった場合があります。

 

「何かあった時に親族が近くにいる」

「動物病院への診療アクセスがよい」

などいくつかの条件をクリアし、

「総合的に見て、この方と関係者が再びこの犬を手放す可能性は低い」

と判断されるような場合は、

保護犬の譲渡先として検討できるように思います。

 

つまり大事に飼いたい人がいて、

周辺のサポートがあって、

動物がそこで幸せに暮らせるのならば

「どういう意味で番犬という言葉をお使いになったのか」

ということを掘り下げて問うても良いように思うわけです。

それで、命が救えるのなら‥‥。

 

f:id:oushinjuui:20190408014036j:image

 

 

 

LEDソーラーライト 本格庭園 防犯 外灯 LEDライト LED照明 LED省エネ 庭 照明 屋外 ソーラーライト 屋外 防雨製 電気代不要 2本/セット