獣医学と映画 (4) 〜ジュラシック・パーク〜
ジュラシック・パーク 1993年
分子生物学の力で現代に甦った恐竜たち。
彼らは繁殖能力を持たない生物として生み出されたはずでした。
しかし、その島を訪れたマルコム博士はこの不気味な一言を発し警告します。
「Life finds a way.
(生命は道を探し出す)」
そして‥‥。
森の奥に恐竜の卵。
彼らは繁殖している!
カエルのDNAを組み込まれた恐竜は性転換により繁殖能力を獲得し‥‥。
おっとこの辺でとめておきましょう。
「生命は道を探し出す」。
いつか現れると思っていました。
特に最近、海洋のプラスチック汚染が問題になっています。
しかし今回発見された細菌「イデオネラ・サカイエンシス」はポリエチレンテレフタレート(PET)を食べ、二酸化炭素と水にまで分解してしまう‥‥。
まだまだ世界には広大な研究領域が残されているようです。
夢が広がります。
しかし、少し気になる点もあります。
この細菌がどんどん活動領域を広げていったら、現代文明はどうなるのかな‥‥と。
細菌とウイルスの違いこそあれ、私は犬パルボウイルスのことを思い出します。
犬、特に若齢犬に対しての脅威となるこのウイルスは、1976年以前に報告がありません。
今でこそ我々獣医師や愛護団体の方々の間で非常な関心を持って語られるこの恐ろしいウイルスは、1976年のヨーロッパに突如出現するまで全く未知のものでした。
しかし1978年には、犬に心筋炎と致死性の消化器障害を引き起こすウイルスとして、世界規模での報告がされています。
イデオネラ・サカイエンシスが記事にあるように、本当に世界を救ってくれるとよいのですが。
生命は道を探し出す。
それは時に、人類が意図したレールを外れ、たおやかに世界を渡っていく。
人類の想像を超えるスピードで。
自然からの恩恵を享受しようとするとき、福音だけを手にすることが許されるのか。
果たして人類が「プラスチックを食べる細菌」を見つけたのか。
それとも細菌が「食料を提供してくれる人類」を見つけたのか。
私の地元・堺で発見されたイデオネラ・サカイエンシス、注目していきたいと思っています。